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シフト勤務の就業規則ガイド|作成義務から記載例、トラブル防止策まで徹底解説
目次
シフト勤務の就業規則について、作成方法や記載事項でお悩みではありませんか。本記事では、就業規則の作成義務や届出といった基本から、労働時間や賃金などの必須記載事項、具体的な記載例までを網羅的に解説します。変形労働時間制やアルバイトへの対応、急なシフト変更といった労使トラブルの防止策も紹介。実態に合わせたルールを明確に定めることが、法令遵守と円滑な職場運営の鍵であることがわかります。
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1. シフト勤務における就業規則の重要性

シフト勤務は、従業員のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を可能にする一方で、勤務日や労働時間が不規則になりがちです。だからこそ、使用者と労働者双方の権利と義務を明確にする「就業規則」の存在が極めて重要になります。明確なルールがない状態では、ささいな認識の違いが大きな労使間トラブルに発展しかねません。この章では、シフト勤務において就業規則がいかに重要な役割を果たすのかを、基本から解説します。
1.1 就業規則とは?企業のルールブックの基本を理解する
就業規則とは、賃金や労働時間といった労働条件、従業員が守るべき職場の規律などを定めた「企業の公式なルールブック」です。 労働基準法第89条により、正社員やアルバイトなどの雇用形態にかかわらず、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長へ届け出る義務があります。
就業規則は、単なる社内ルールではありません。法令や労働協約に反しない限り、記載された内容は個別の労働契約にも影響を与え、使用者と労働者の双方を法的に拘束する効力を持ちます。 つまり、従業員にとっては安心して働ける環境の基盤となり、企業にとっては安定した組織運営の土台となるのです。
| 項目 | 就業規則 | 労働契約 | 労働協約 |
|---|---|---|---|
| 作成者 | 使用者 | 使用者と労働者 | 労働組合と使用者 |
| 内容 | 事業場の統一的な労働条件や服務規律 | 個別の労働条件 | 労働条件の基準や団体交渉のルールなど |
| 適用範囲 | 原則として事業場の全労働者 | 契約を締結した個々の労働者 | 原則として労働組合の組合員 |
1.2 なぜシフト制に就業規則が不可欠なのか
日々の勤務時間が固定されている一般的な働き方と異なり、シフト制は勤務パターンが多様で変動的です。正社員、契約社員、アルバイトなど、異なる立場の従業員が混在することも少なくありません。このような特性を持つシフト制だからこそ、全ての従業員に適用される統一的かつ公平なルールブック、すなわち就業規則が不可欠となるのです。
1.2.1 労使間のトラブルを未然に防ぐ
シフト制で特に発生しやすいのが、シフトの決定・変更や労働時間を巡るトラブルです。 例えば、「希望の休みが全く通らない」「一方的にシフトを減らされて収入が不安定になった」「急なシフト変更を強要される」といった問題は、労使間の信頼関係を大きく損ないます。 就業規則に、シフトの提出期限、決定・通知方法、やむを得ず変更する場合の手続きや条件などを具体的に定めておくことで、これらのトラブルを未然に防ぐことができます。 また、割増賃金の計算方法などを明確にすることも、賃金未払いといった金銭トラブルの防止に繋がります。
1.2.2 職場の秩序を維持する
就業規則は、職場全体の秩序を維持し、円滑な業務運営を実現するための基盤です。 シフト制の職場では、従業員ごとに出勤・退勤時間が異なるため、情報共有や業務の引き継ぎが重要になります。遅刻・早退・欠勤時の連絡方法や手続き、休憩の取得ルールなどを就業規則で明確に定めることで、従業員は安心して業務に集中でき、組織としての一体感を保つことができます。 全員が共通のルールを認識し遵守することが、公平で働きやすい職場環境の構築に繋がるのです。
1.2.3 コンプライアンスを遵守する
企業活動において、法令を遵守する「コンプライアンス」は社会的責任の根幹をなします。 就業規則は、労働基準法をはじめとする労働関係法令を遵守した企業運営を行うための土台です。 労働時間、休憩、休日、年次有給休暇といった法定の基準を就業規則に正しく反映させ、それに則ってシフト管理を行うことは、企業の義務です。 特に、繁忙期と閑散期で労働時間を調整する「変形労働時間制」を導入する場合、その旨を就業規則に詳細に規定することが法律で義務付けられています。 就業規則を適切に整備・運用することは、労働基準監督署からの是正勧告といったリスクを回避し、企業の信頼性を守る上で不可欠なのです。
2. シフト勤務における就業規則の作成・届出義務

シフト勤務を導入している、あるいはこれから導入する企業にとって、就業規則の作成と届出は法律で定められた重要な義務です。労働者との間で無用なトラブルを避け、健全な職場環境を維持するためにも、そのルールを正しく理解し、遵守することが求められます。この章では、就業規則の作成・届出義務が発生する条件から、具体的な手続きの流れまでを詳しく解説します。
2.1 就業規則の作成が義務付けられる事業場の条件とは
労働基準法第89条により、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務付けられているのは、「常時10人以上の労働者を使用する事業場」です。この条件について、二つの重要なポイントを解説します。
2.1.1 ポイント1:「常時10人以上」の考え方
「常時10人以上」とは、企業の全従業員数ではなく、常態として10人以上の労働者がいるかどうかで判断されます。この人数には、正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイト、契約社員など、雇用形態に関わらず全ての労働者が含まれます。日によって出勤者数が変動するシフト制の職場であっても、在籍している労働者の総数が常時10人以上であれば、作成義務の対象となります。
2.1.2 ポイント2:「事業場ごと」の判断
就業規則の作成義務は、企業全体ではなく「事業場ごと」に判断されます。事業場とは、本社、支社、営業所、店舗、工場など、ある程度独立して事業が行われている場所を指します。例えば、企業全体の従業員数が50人でも、A支店に15人、B支店に8人、C店舗に7人在籍している場合、就業規則の作成義務があるのはA支店のみとなります。ただし、各事業場の就業規則の内容が同一である場合は、本社が管轄の労働基準監督署へ一括して届け出ることも可能です。
2.2 労働基準監督署への届出と意見聴取の手順
就業規則を作成または変更した際は、労働基準監督署へ届け出る必要があります。この届出は「遅滞なく」行うものとされており、明確な期限はありませんが、作成後速やかに行うことが推奨されます。届出にあたっては、単に書類を提出するだけでなく、その前に労働者の意見を聴く「意見聴取」という重要なプロセスが法律で定められています。以下に、その手順を具体的に説明します。
2.2.1 1. 労働者の意見聴取
使用者は、就業規則の作成・変更にあたり、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者(労働者代表)から意見を聴かなければなりません。この労働者代表は、管理監督者ではない者の中から、投票や挙手といった民主的な方法で公正に選出される必要があります。会社が一方的に指名することはできません。
聴取した意見は「意見書」という書面にまとめ、労働者代表に署名または記名押印してもらいます。法律で求められているのはあくまで「意見を聴くこと」であり、同意を得ることまでが義務ではありません。したがって、労働者側から反対意見が出た場合でも、その意見を記載した意見書を添付すれば、届出は受理されます。
2.2.2 2. 労働基準監督署への届出
意見聴取が完了したら、事業場の所在地を管轄する労働基準監督署へ必要書類を提出します。届出には、以下の書類が必要です。
| 書類名 | 概要 |
|---|---|
| 就業規則(変更)届 | 就業規則を新たに作成、または変更した旨を届け出るための書類です。 |
| 意見書 | 労働者代表から聴取した意見を記載した書面です。労働者代表の署名または記名押印が必要です。 |
| 就業規則の本文 | 作成または変更した就業規則そのものです。賃金規程や育児・介護休業規程などを別規程としている場合は、それらも一体のものとして提出が必要です。 |
提出方法は、労働基準監督署の窓口へ直接持参するほか、郵送や政府が運営する電子申請システム(e-Gov)を利用する方法があります。窓口や郵送で提出する場合、会社の控えとして受付印が押されたものを受け取るために、提出用と会社控え用の2部を用意するのが一般的です。
2.2.3 3. 作成・届出した就業規則の周知
労働基準監督署への届出が完了しても、手続きは終わりではありません。作成・変更した就業規則は、必ず従業員に周知する義務があります(労働基準法第106条)。周知されていない就業規則は法的な効力が認められない可能性があり、トラブルの原因となります。
具体的な周知方法としては、以下のいずれかの方法が定められています。
- 常時各作業場の見やすい場所へ掲示、または備え付ける。
- 全労働者に書面を交付する。
- 電子データで保存し、各労働者がいつでも自身のパソコン等で内容を確認できる状態にしておく。
3. シフト制の就業規則に必ず記載すべき必須項目(絶対的必要記載事項)

就業規則には、法律(労働基準法第89条)によって必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」が定められています。これらが記載されていない就業規則は、法律違反となる可能性があるため注意が必要です。特に従業員ごとに勤務時間が異なるシフト制においては、これらの項目をより明確に、かつ具体的に定めることが労使間のトラブルを防ぐ鍵となります。
3.1 労働時間・休憩・休日に関する規定
労働時間は従業員の健康や生活に直結する最も重要な労働条件の一つです。シフト制勤務では、日や週によって労働時間が変動するため、従業員が自身の勤務条件を正確に把握できるよう、詳細な規定が求められます。
3.1.1 始業・終業時刻、休憩時間
シフト制勤務では、全従業員の始業・終業時刻を就業規則に画一的に記載することが困難です。そのため、具体的な時刻はシフト表など個別の通知で定める旨を規定するのが一般的です。ただし、その場合でも想定される勤務パターンの例を記載しておくことが、従業員の理解を助け、トラブル防止に繋がります。
| 項目 | 規定内容のポイント | 記載例 |
|---|---|---|
| 始業・終業時刻 | 基本的な勤務時間帯のパターンを複数例示し、具体的な日々の始業・終業時刻は、個別の労働契約や事前に通知するシフト表によって決定することを明記します。 | 「始業及び終業の時刻は、次の勤務パターンのいずれかを基本とし、各人別に作成するシフト表により、事前に通知する。」 ・早番:午前8時30分~午後5時30分 ・遅番:午後1時00分~午後10時00分 |
| 休憩時間 | 労働基準法で定められた休憩時間(労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上)を必ず付与することを明記します。各シフトパターンに応じた休憩時間や、一斉付与の原則の例外についても定めておくとよいでしょう。 | 「休憩時間は、労働時間が6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は1時間とし、シフト表にて各人へ通知する。」 |
3.1.2 シフトの決定・通知方法と変更手続き
シフトの決定プロセスを明確にすることは、公平性を担保し、従業員の不満を抑制する上で非常に重要です。いつまでに希望を提出し、いつまでにシフトが確定・通知されるのかを具体的に定める必要があります。
| 項目 | 規定内容のポイント | 記載例 |
|---|---|---|
| シフトの決定・通知 | 従業員からの希望シフトの提出期限、会社がシフトを確定させる時期、そして従業員への通知方法(掲示、書面交付、システムでの通知など)を具体的に定めます。 | 「会社は、毎月20日までに翌月1日から末日までの勤務シフト希望を聴取し、毎月25日までにシフト表を作成し、事業所内への掲示により各従業員に通知する。」 |
| シフトの変更手続き | 一度確定したシフトをやむを得ず変更する場合のルールを定めます。従業員からの変更申し出の手続きと、会社が業務の都合で変更を命じる場合の手続きの両方を記載します。 | 「やむを得ない事由により確定したシフトの変更を希望する場合は、原則として勤務日の3日前までに所属長へ申し出なければならない。また、会社は業務上の必要がある場合、従業員と協議の上、シフトを変更することがある。」 |
3.1.3 休日の設定方法
労働基準法では、従業員に対して「毎週少なくとも1回」または「4週間を通じて4日以上」の休日(法定休日)を与えることが義務付けられています。シフト制では休日が不規則になるため、就業規則で休日の設定方法を明確にしておく必要があります。
具体的な曜日を特定できない場合が多いため、「休日はシフト表によって定める」と規定することが一般的です。また、4週4日の変形休日制を採用する場合は、その起算日を就業規則に明記する必要があります。
3.2 賃金に関する規定
賃金に関する事項は、労働契約の根幹をなす要素であり、最もトラブルが発生しやすい項目の一つです。そのため、計算方法や支払ルールを誰が読んでも明確に理解できるように記載することが求められます。
3.2.1 賃金の決定、計算・支払方法
賃金の構成要素(基本給、手当など)や、時給・日給・月給といった賃金形態を明確に規定します。特にシフト制で働くパートタイマーやアルバイトの場合は、時給制が多いため、その計算方法を具体的に示すことが重要です。また、時間外労働、休日労働、深夜労働(午後10時から午前5時まで)に対する割増賃金の計算方法と割増率も法律に基づき正確に記載する必要があります。
3.2.2 賃金の締切・支払時期
「毎月月末締め、翌月25日払い」のように、賃金の計算対象となる期間(締切日)と、実際に支払われる日(支払日)を具体的に明記します。支払日が金融機関の休業日にあたる場合の取り扱い(前日に支払うか、翌営業日に支払うか)についても定めておくと、より親切です。
3.2.3 昇給に関する事項
昇給の有無、昇給を行う場合の判断基準(勤務成績、会社の業績など)、時期、手続きについて定めます。昇給に関する規定は従業員のモチベーションにも影響するため、評価の透明性や公平性が感じられる内容にすることが望ましいです。「会社の業績及び個人の勤務成績を考慮し、毎年4月に改定することがある」といった形で、可能性や条件を記載します。
4. シフト制で定めておくと安心な項目(相対的・任意的記載事項)

就業規則には、法律で定められた「絶対的必要記載事項」の他にも、社内のルールとして定めておくことで、労使間の無用なトラブルを未然に防ぐために役立つ項目があります。これらは「相対的必要記載事項」と「任意的記載事項」と呼ばれます。相対的必要記載事項は、退職手当や賞与など、会社として制度を設ける場合には必ず記載しなければならない事項です。任意的記載事項は、企業の理念や服務規律など、法律上の義務はありませんが、職場の秩序維持のために定めることが推奨される項目です。ここでは、特にシフト勤務において定めておくと安心な項目を具体的に解説します。
4.1 退職に関する事項(解雇事由を含む)
従業員の退職に関する手続きを明確に定めておくことは、円滑な業務の引継ぎと人員補充のために不可欠です。特にシフト勤務では、一人の急な退職が他の従業員の負担増に直結しやすいため、ルールを明確化しておく重要性が高まります。
自己都合退職の場合、退職願をいつまでに提出すべきか(例:退職希望日の1ヶ月前まで)、業務の引継ぎを誠実に行う義務があることなどを規定します。これにより、シフトの再調整や後任者の採用・教育に必要な期間を確保しやすくなります。
また、会社が従業員を解雇せざるを得ない場合の解雇事由も具体的に記載しておく必要があります。労働契約法に基づき、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない解雇は無効とされます。シフト勤務で問題となりやすい、以下のようなケースを想定して具体的な事由を定めておくとよいでしょう。
- 正当な理由のない無断欠勤が一定期間続いた場合
- 頻繁な遅刻や早退により、他の従業員の業務に支障を生じさせた場合
- 協調性を著しく欠き、職場のチームワークを乱した場合
- 業務命令に従わず、職場の秩序を著しく乱した場合
4.2 欠勤・遅刻・早退時のルール
シフト勤務は、従業員一人ひとりが定められた時間帯の業務を担うことで成り立っています。そのため、一人の欠勤や遅刻が業務全体に与える影響は少なくありません。トラブルを避けるためにも、欠勤、遅刻、早退に関するルールを就業規則で明確に定めておくことが極めて重要です。
まず、連絡方法と期限を具体的に定める必要があります。例えば、「やむを得ない理由で欠勤・遅刻・早退をする場合は、必ず始業時刻の15分前までに所属長へ電話で連絡すること」のように、誰に、いつまでに、どのような手段で連絡すべきかを明記します。緊急時を除き、事前の届出を原則とすることも重要です。
無断欠勤は、他の従業員への負担増だけでなく、職場の規律を乱す大きな要因となります。そのため、正当な理由なく連絡のない欠勤は無断欠勤とし、懲戒処分の対象となることを明記しておくべきです。また、遅刻や早退した時間分の賃金は支払われない「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づき、賃金控除の対象となることも記載しておきましょう。
4.3 休日・休暇(年次有給休暇の取得ルールなど)
従業員が心身ともに健康に働き続けるためには、適切な休日と休暇の取得が不可欠です。シフト勤務においても、労働基準法で定められた各種休暇制度を遵守し、就業規則にそのルールを明記する必要があります。
特に年次有給休暇については、シフト制特有の運用ルールを定めておくことで、従業員が円滑に休暇を取得でき、同時に事業の運営も滞りなく進めることができます。具体的には、以下の点を規定しておくとよいでしょう。
- 申請手続き:年次有給休暇を取得する際の申請期限(例:取得希望日の2週間前まで)や申請方法を定めます。
- 時季変更権:従業員の希望する時季に休暇を与えることが「事業の正常な運営を妨げる」場合に限り、会社が取得時季を変更できる権利です。シフト勤務においては、代替要員の確保が困難な場合などが想定されますが、権利の濫用とならないよう注意が必要です。
- 計画的付与制度:労使協定を結ぶことで、会社が計画的に従業員の有給休暇取得日を割り振ることができる制度です。閑散期などに合わせて設定することで、計画的な休暇取得を促進できます。
パートタイマーやアルバイトなど、所定労働日数が少ない従業員に対しても、労働日数に応じた年次有給休暇を付与する義務があります。以下の表のように、週の所定労働日数や1年間の所定労働日数に応じた付与日数を明記しておくと分かりやすいでしょう。
| 週の所定労働日数 | 1年間の所定労働日数 | 6ヶ月 | 1年6ヶ月 | 2年6ヶ月 | 3年6ヶ月 | 4年6ヶ月 | 5年6ヶ月 | 6年6ヶ月以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 4日 | 169日~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
| 3日 | 121日~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
| 2日 | 73日~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
| 1日 | 48日~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
4.4 服務規律と制裁規定
服務規律とは、職場の秩序を維持し、従業員が円滑に業務を遂行するために守るべきルールのことです。服務規律を就業規則に明文化することで、従業員の行動規範が明確になり、労務トラブルの防止につながります。シフト勤務においては、以下のような項目を具体的に定めておくと効果的です。
- 勤務中の私語や持ち場を離れる行為の禁止
- 顧客や同僚に対する丁寧な言動の徹底
- 会社の備品や情報の適切な取り扱い
- SNSなどでの業務に関する情報発信のルール
- 清潔感のある身だしなみに関する規定
そして、服務規律に違反した従業員に対して、どのような制裁(懲戒処分)を行うかを定めたものが制裁規定です。懲戒処分を行うためには、あらかじめ就業規則にその種類と事由が定められている必要があります。処分の重さは、違反行為の内容や程度に応じて段階的に設定するのが一般的です。
| 懲戒処分の種類 | 内容 |
|---|---|
| 譴責(けんせき) | 始末書を提出させ、将来を戒める。最も軽い処分。 |
| 減給 | 始末書を提出させた上で、賃金から一定額を差し引く。ただし、1回の額が平均賃金の1日分の半額、総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えてはならないという法的上限がある。 |
| 出勤停止 | 始末書を提出させるほか、一定期間の出勤を禁止する。その間の賃金は支払われない。 |
| 懲戒解雇 | 最も重い処分。予告期間を設けずに即時解雇する。 |
これらの規定を設けることで、企業としての秩序を維持し、真面目に働く多くの従業員が安心して働ける職場環境を確保することにつながります。
5. 【種類別】シフト勤務の就業規則作成のポイント
シフト勤務と一口に言っても、その運用形態は様々です。企業の業種や従業員の働き方によって最適なシフト制は異なり、就業規則に記載すべき内容も変わってきます。ここでは、代表的なシフト勤務の種類別に、就業規則を作成する際の重要なポイントと注意点を具体的に解説します。
5.1 固定シフト制の場合の注意点
固定シフト制は、勤務する曜日や時間帯があらかじめ決まっている働き方です。従業員にとっては収入や生活の見通しが立てやすいというメリットがあります。就業規則では、各従業員の始業・終業時刻や休日を明確に規定することが基本となります。
しかし、店舗の状況や業務の繁閑によっては、事前に定めたシフトの変更が必要になるケースも想定されます。そのため、就業規則には「業務上の都合により、始業・終業時刻を繰り上げ、または繰り下げることがある」といった条項を設け、シフト変更の可能性について言及しておくことが重要です。その際には、変更を命じる際の手続き(例:〇日前までに通知する、代替シフトを提示するなど)も併せて明記し、労使間の無用なトラブルを未然に防ぐよう努めましょう。
5.2 変形労働時間制を導入する場合の規定方法
変形労働時間制は、月単位や年単位で労働時間を調整し、繁忙期に法定労働時間を超えて勤務させても、期間全体で平均して週40時間を超えなければ時間外労働として扱わない制度です。この制度を導入するには、就業規則への規定に加えて、労働者の過半数で組織する労働組合(または労働者の過半数代表者)との間で労使協定を締結し、所轄の労働基準監督署長へ届け出る必要があります。
就業規則には、以下の項目を必ず記載しなければなりません。
- 変形労働時間制を適用する労働者の範囲
- 対象となる期間(「1ヶ月単位」または「1年単位」など)と、その起算日
- 対象期間における総労働時間
- 各日・各週の労働時間の具体的な定め方(シフト表の作成・周知方法など)
5.2.1 1ヶ月単位の変形労働時間制
1ヶ月単位の変形労働時間制は、1ヶ月以内の期間を平均して、1週間の労働時間が40時間以内になるようにシフトを組む制度です。月内の繁閑に合わせて柔軟に労働時間を設定できるため、小売業や飲食業などで広く活用されています。
就業規則には、対象期間(例:「毎月1日を起算日とする1ヶ月間」)を明記した上で、各労働日の始業・終業時刻をどのように特定するかを具体的に定める必要があります。一般的には、「始業・終業時刻は、前月の末日までに作成するシフト表により各人に通知する」といった形で規定します。一度確定したシフトを原則として変更することは認められていないため、やむを得ず変更する場合のルールも定めておくことが望ましいです。
5.2.2 1年単位の変形労働時間制
1年単位の変形労働時間制は、季節によって業務の繁閑差が大きい業種に適した制度で、1年以内の期間を平均して週40時間の労働時間に収めます。この制度を導入する場合、労働時間にはより厳しい制限が課せられます。
| 項目 | 規定内容 |
|---|---|
| 1日の労働時間の上限 | 10時間 |
| 1週間の労働時間の上限 | 52時間 |
| 連続労働日数の上限 | 原則6日(特定期間は1週間に1日の休日が確保できる範囲で12日まで可) |
| 年間の労働日数の上限 | 対象期間が1年の場合、280日 |
| 年間の休日数 | 最低でも105日(対象期間が1年の場合)※うるう年は106日 |
就業規則には、これらの上限を遵守する旨を記載するとともに、対象期間の労働日および各労働日の労働時間を「年間カレンダー」等で特定することを明記する必要があります。業務の都合上、年間カレンダーで全ての労働日を特定できない場合は、対象期間を1ヶ月以上の期間ごとに区分し、各期間の初日の30日前までにシフトを通知する方法も認められています。
5.3 アルバイト・パートタイマーに適用する際の注意点
アルバイトやパートタイマーであっても、労働者であることに変わりはなく、労働基準法が適用されます。そのため、正社員とは別の就業規則(パートタイマー就業規則など)を作成する場合でも、記載すべき必須事項は同じです。特に以下の点に注意して規定を整備しましょう。
- 労働契約の期間と更新の基準:有期雇用契約の場合、契約期間、契約更新の有無、更新する場合の判断基準(例:勤務成績、会社の経営状況など)を明記することが、雇い止めに関するトラブル防止につながります。
- 昇給・賞与・退職金の有無:これらの制度を適用するか否かを明確に記載します。パートタイム・有期雇用労働法では、正社員と非正規雇用労働者との間で不合理な待遇差を設けることを禁止しており(同一労働同一賃金)、待遇差がある場合はその理由を説明できるようにしておく必要があります。
- 労働時間・休日:勤務日や時間帯が個々の労働契約によって異なる場合が多いため、「始業・終業時刻、休憩時間、休日については、個別の労働契約書で定める」といった包括的な規定を置くことが一般的です。
- 年次有給休暇:所定労働日数に応じた年次有給休暇の比例付与について、法律に基づいたルールを明記する必要があります。
6. シフト勤務の就業規則に関するよくある質問(Q&A)

シフト勤務の就業規則を作成・運用する上で、現場の管理者や従業員から寄せられることの多い質問とその回答をまとめました。トラブルを未然に防ぎ、円滑な職場運営を実現するための参考にしてください。
6.1 急なシフト変更は命令できますか?
原則として、一度確定したシフトは労働契約の内容となるため、会社が一方的に変更することはできず、労働者の個別の同意が必要となります。しかし、多くの企業では就業規則に「業務上の都合により、始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げや、勤務日の変更を命じることがある」といった趣旨の規定を設けています。
このような規定がある場合、会社は従業員の個別同意なくシフト変更を命じる「業務命令権」を持つことになります。ただし、その権利は無制限に認められるわけではありません。シフト変更命令が有効かどうかは、以下の要素を総合的に考慮して判断されます。
6.1.1 シフト変更命令の有効性を判断するポイント
業務命令権の行使が権利の濫用にあたらないためには、シフト変更の「業務上の必要性」が、それによって労働者が被る「不利益」を上回っている必要があります。
| 判断要素 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 業務上の必要性の程度 |
|
| 労働者が被る不利益の程度 |
|
| 代替措置・配慮の有無 |
|
たとえ就業規則に定めがあっても、従業員の生活に大きな支障をきたすような急な変更や、変更理由に合理性がない場合は、権利濫用として無効になる可能性があります。トラブルを避けるためにも、日頃から従業員とのコミュニケーションを密にし、やむを得ず変更をお願いする際は、その必要性を丁寧に説明し、理解と協力を得ることが重要です。
6.2 希望休が通らないのは違法になりますか?
結論から言うと、従業員の希望休が通らないこと自体が、直ちに違法となるわけではありません。ここで重要なのは、「希望休」と法律で取得が義務付けられている「年次有給休暇」を区別して考えることです。
6.2.1 希望休とシフト編成権について
「希望休」は、年次有給休暇とは別に、従業員が特定の日に休みを希望するものです。これに応じるかどうかは、基本的には会社の裁量に委ねられています。シフト制の職場では、必要な人員を確保し、事業を円滑に運営するために会社側に「シフト編成権」が認められており、従業員全員の希望を常に受け入れられるとは限りません。特に、繁忙期や他の従業員と希望が重なった場合などは、希望が通らないこともあり得ます。
ただし、特定の従業員だけが不合理に希望を却下されるなど、差別的な扱いを受けている場合は、パワーハラスメントに該当する可能性も考えられます。公平性を保つためにも、希望休の提出ルール(例:提出期限、日数上限など)を就業規則で明確に定めておくことが望ましいでしょう。
6.2.2 年次有給休暇の場合
一方、労働基準法で定められた「年次有給休暇」は、労働者に与えられた権利です。従業員が具体的な日付を指定して年次有給休暇を申請した場合、会社は原則としてその日に休暇を与えなければなりません。
例外的に、会社は「時季変更権」を行使して、従業員に取得日の変更をお願いすることができます。しかし、この時季変更権が認められるのは、「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合」に限られます。単に「忙しいから」「代わりの人員がいないから」といった理由だけでは、時季変更権の行使は認められない可能性が高いです。代替勤務者の確保などの配慮を最大限行った上で、それでもなお事業運営に重大な支障が出る場合にのみ、行使が検討されるものと理解しておく必要があります。
6.3 作成した就業規則の周知方法は?
就業規則は、作成して労働基準監督署に届け出るだけでは効力が発生しません。労働基準法第106条に基づき、雇用するすべての労働者にその内容を「周知」させることが義務付けられています。この周知義務を怠ると、就業規則が無効と判断されたり、30万円以下の罰金が科されたりする可能性があります。
6.3.1 労働基準法で定められた具体的な周知方法
周知の方法は、労働基準法施行規則第52条の2で、以下のいずれかの方法によることと定められています。
- 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること
- 書面を労働者に交付すること
- 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること
事業所の休憩室や更衣室など、従業員がいつでも自由に閲覧できる場所にファイル等で備え付ける方法です。
就業規則を印刷し、全従業員に配布する方法です。確実な方法ですが、変更の都度、印刷・配布するコストがかかります。
社内のイントラネットや共有サーバーに従業員がいつでもアクセスできる状態で保存しておく方法です。パソコンが1人1台ない職場でも、共有のパソコンを設置し、誰でも閲覧できる状態にしておく必要があります。
給与規程や退職金規程など、就業規則本体とは別の規程も周知義務の対象となります。どの方法を選択するにせよ、「従業員がいつでも就業規則の内容を知りうる状態」にしておくことが最も重要です。
7. まとめ
本記事では、シフト勤務における就業規則の重要性から、作成義務、具体的な記載事項、トラブル防止策までを網羅的に解説しました。シフト勤務は多様な働き方ゆえに、労働時間や休日に関するルールを明確に定めなければ、労使トラブルに発展しやすくなります。労働基準法に則った必須項目に加え、シフトの決定・変更手続きや欠勤時の対応などを具体的に規定することが、健全な職場運営の鍵となります。本ガイドを参考に自社の就業規則を整備し、従業員が安心して働ける環境づくりを進めましょう。
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