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変形労働時間制とシフト制の違いとは?図解でわかる定義とメリット・デメリット

変形労働時間制とシフト制の違いとは?図解でわかる定義とメリット・デメリット

変形労働時間制とシフト制、どちらも勤務時間が変動する働き方として混同されがちですが、両者は全くの別物です。結論から言うと、変形労働時間制は労働基準法で定められた「労働時間を月や年単位で調整し、法定労働時間を超えた分を残業とみなす法律上の制度」である一方、シフト制は早番や遅番といった「勤務時間帯の割り当てパターンを示す働き方の呼称」に過ぎません。

この記事では、法律上の位置づけや残業代の計算方法といった根本的な違いを比較表や図解で誰にでも分かりやすく解説します。さらに、それぞれのメリット・デメリット、両制度を併用する具体的なケース、自社に合う制度の選び方から導入・運用の注意点まで、人事労務担当者が知りたい情報を網羅しました。

この記事を最後まで読めば、二つの制度の違いが明確に理解でき、自社の勤怠管理を最適化するための具体的なアクションプランを描けるようになります。

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1. 変形労働時間制とシフト制の根本的な違いを一覧で比較

「変形労働時間制」と「シフト制」は、どちらも柔軟な働き方を実現するための仕組みですが、その意味合いは全く異なります。変形労働時間制が労働基準法で定められた「労働時間の管理・計算ルール」であるのに対し、シフト制は法律上の定義はなく、単に「勤務時間の割り当てパターン」を指す言葉です。 まずは、両者の根本的な違いを一覧表で確認しましょう。

比較項目 変形労働時間制 シフト制
制度の定義 月や年単位で労働時間を調整し、特定の日に法定労働時間を超えて働くことを可能にする「労働時間制度」。 複数の勤務時間帯(早番、遅番など)を設け、従業員が交代で勤務する「働き方・勤務形態」。
法律上の位置づけ 労働基準法に定められた法的な制度。 法律上の定義はなく、法的な制度ではない。
目的 業務の繁閑に合わせて労働時間を効率的に配分し、総労働時間を短縮すること。 長時間営業や24時間体制の事業所などで、従業員を交代勤務させることで事業を継続すること。
残業代の計算 日・週・変形期間全体で、それぞれ定められた所定労働時間を超えた分が時間外労働となる複雑な計算が必要。 原則として、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた分が時間外労働となる。
導入要件 就業規則への規定や、労使協定の締結・労働基準監督署への届出が必要。 法的な届出は不要だが、就業規則や労働契約で勤務パターンやシフト決定ルールを定める必要がある。

1.1 法律上の位置づけの違い

変形労働時間制とシフト制の最も大きな違いは、法律上の位置づけです。変形労働時間制は、労働基準法第32条で定められた「1日8時間・週40時間」という法定労働時間の原則に対する例外を認める、法的な制度です。 導入するには、1カ月単位や1年単位といった種類ごとに定められた要件を満たし、就業規則への記載や労使協定の締結、そして所轄の労働基準監督署への届出といった厳格な手続きが求められます。

一方、シフト制という言葉は労働基準法には存在しません。 あくまで、早番・遅番・夜勤といった複数の勤務時間帯を設けて従業員を交代で勤務させる働き方の通称です。そのため、シフト制自体を導入するための法的な届出義務はありません。 ただし、もちろんシフト制であっても労働基準法は適用されるため、法定労働時間や法定休日のルールは遵守する必要があります。

1.2 目的と効果の違い

両者は、その目的も異なります。変形労働時間制の主な目的は、季節や月によって業務の繁閑差が大きい事業所において、労働時間を柔軟に配分することです。 閑散期には労働時間を短くし、その分を繁忙期の労働時間に充てることで、期間全体で労働時間を調整し、不要な残業を減らして総労働時間を短縮する効果が期待できます。

対してシフト制は、小売業や飲食業、医療、工場など、営業時間が法定労働時間である8時間を超える場合や、24時間稼働が必要な事業所を運営するための仕組みです。複数の勤務パターンを設定し、従業員が交代で働くことで、切れ目なくサービスや生産を継続させることが主な目的となります。

1.3 残業代の計算方法の違い

残業代(時間外労働の割増賃金)の計算方法も、両者で大きく異なります。この違いを理解しないと、賃金未払いなどのトラブルにつながる可能性があるため注意が必要です。

シフト制(変形労働時間制を導入していない場合)の残業時間は、原則通りに計算されます。つまり、「1日8時間、週40時間」の法定労働時間を超えて働いた時間が、時間外労働となります。

一方で、変形労働時間制における残業時間の考え方は複雑です。 残業となるのは、以下の3つのケースです。

  1. 日ごと:就業規則などで定めた1日の所定労働時間を超えて働いた時間(所定労働時間が8時間を超える日にあっては、その時間を超えた時間)
  2. 週ごと:就業規則などで定めた1週間の所定労働時間を超えて働いた時間(所定労働時間が40時間を超える週にあっては、その時間を超えた時間)。ただし、1で計算した日の残業時間は除きます。
  3. 変形期間全体:変形期間における法定労働時間の総枠を超えて働いた時間。ただし、1と2で計算した残業時間は除きます。

このように、変形労働時間制では日・週・期間全体の3段階で残業時間を算出しなければならず、勤怠管理が煩雑になるという特徴があります。

2. 変形労働時間制とは?労働時間を柔軟に調整する制度

変形労働時間制とは、労働基準法で定められた制度の一つで、一定の期間内を平均して週の法定労働時間(原則40時間)を超えなければ、特定の日や週に法定労働時間(原則1日8時間・週40時間)を超えて労働時間を設定できる制度です。業務の繁閑に合わせて労働時間を柔軟に配分できるため、閑散期には労働時間を短くし、繁忙期には長くするといった運用が可能になります。これにより、企業は残業代を抑制しつつ、効率的な人員配置を実現できます。

2.1 変形労働時間制の4つの種類とそれぞれの特徴

変形労働時間制には、対象とする期間の長さや導入要件によって主に4つの種類があります。それぞれの特徴が異なるため、自社の業種や事業の特性に合わせて最適な制度を選択することが重要です。以下に各制度の主な特徴をまとめました。

種類 対象期間 主な対象企業 導入に必要な手続き
1カ月単位 1カ月以内 月内で繁閑の差がある企業(例:月末が忙しい経理部門) 労使協定の締結、または就業規則への規定
1年単位 1カ月を超え1年以内 季節によって繁閑の差が激しい企業(例:リゾート業、建設業) 労使協定の締結と労働基準監督署への届出
1週間単位 1週間 日々の繁閑の差が激しい小規模な特定事業(小売業、旅館、飲食店) 労使協定の締結と労働基準監督署への届出
フレックスタイム制 3カ月以内(清算期間) 従業員の自主性に任せた働き方が可能な企業(例:IT業、企画・開発職) 就業規則への規定と労使協定の締結

2.1.1 1カ月単位の変形労働時間制

1カ月単位の変形労働時間制は、1カ月以内の期間を平均し、1週間あたりの労働時間が40時間以内になるように労働時間を設定する制度です。この制度を導入すると、特定の日に8時間、特定の週に40時間を超えて労働時間を設定しても、時間外労働として扱われません。月の中で忙しい時期と比較的余裕のある時期がはっきりしている場合に適しており、多くの業種で活用されています。

2.1.2 1年単位の変形労働時間制

1年単位の変形労働時間制は、1カ月を超えて1年以内の期間を対象とし、週平均の労働時間を40時間以内に収める制度です。季節によって業務量が大きく変動する、といった場合に有効な働き方です。ただし、労働者の負担が大きくなりすぎないよう、労働時間や日数には以下の制限が設けられています。

  • 1日の労働時間の上限は10時間
  • 1週間の労働時間の上限は52時間
  • 対象期間中の労働日数の上限は1年で280日
  • 連続して労働させられる日数は原則6日まで(特定期間は最長12日まで可能)

導入には労使協定を締結し、所轄の労働基準監督署長への届出が必須となります。

2.1.3 1週間単位の非定型的変形労働時間制

1週間単位の非定型的変形労働時間制は、日々の業務の繁閑が予測しにくく、突発的な業務が発生しやすい特定の事業で導入できる制度です。対象となるのは、常時使用する労働者数が30人未満の小売業、旅館、料理・飲食店に限られます。1週間の労働時間を40時間以内に収めることで、1日10時間を上限として、日ごとの労働時間を柔軟に設定できます。ただし、週が始まる前に各日の労働時間を従業員に通知する必要があります。

2.1.4 フレックスタイム制

フレックスタイム制は、あらかじめ定められた総労働時間の範囲内で、従業員が日々の始業時刻と終業時刻を自由に決定できる制度です。多くの企業では、必ず勤務しなければならない時間帯である「コアタイム」と、いつ出退勤してもよい「フレキシブルタイム」を設定して運用しています。従業員のワークライフバランスを向上させ、自律的な働き方を促進する効果が期待できます。1〜3カ月の「清算期間」を設け、その期間内で総労働時間を満たすように調整します。

3. シフト制とは?勤務時間帯を複数設定する働き方

シフト制とは、企業があらかじめ設定した複数の勤務時間帯(シフト)の中から、日ごと、あるいは週や月ごとに異なる時間帯で勤務する働き方のことです。 従業員が交代で勤務することにより、企業は法定労働時間を遵守しながら、営業時間の長い店舗運営や24時間体制でのサービス提供が可能になります。 この勤務形態は、飲食店、小売店、医療・介護施設、工場など、幅広い業種で採用されています。

シフト制は、労働基準法で直接的に定義された用語ではありませんが、運用にあたっては法定労働時間(原則1日8時間、週40時間)や休憩、休日の規定を遵守する必要があります。

3.1 主なシフト制の3つの種類

シフト制は、働き方やシフトの決め方によって、主に「固定シフト制」「希望シフト(自由シフト)制」「交代制」の3つに大別されます。それぞれの特徴を理解し、自社の業態や従業員のライフスタイルに合った制度を選択することが重要です。

シフト制の種類 特徴 向いている職場・従業員
固定シフト制 勤務する曜日や時間帯が常に決まっている。 従業員数が少なく、営業時間が比較的短い店舗、安定した収入や生活リズムを求める従業員。
希望シフト(自由シフト)制 従業員の希望を基に、期間ごとにシフトを作成する。 学生や主婦など多様な人材が働く飲食店や小売店、プライベートと両立させたい従業員。
交代制 従業員をグループ分けし、決められたパターンで交代勤務する。 24時間稼働の工場、病院、介護施設、ホテルなど。

3.1.1 固定シフト制

固定シフト制は、働く曜日と時間帯をあらかじめ決めて、毎週同じパターンで勤務する方式です。 例えば、「毎週火曜日と木曜日の10時から17時まで」のように、勤務スケジュールが固定されます。

メリット: 従業員にとっては、毎月の勤務時間や収入が安定し、生活リズムを整えやすくプライベートの予定も立てやすいという利点があります。 企業側も、人員計画が立てやすく、シフト作成にかかる管理者の負担を軽減できるメリットがあります。

デメリット: 従業員は急な予定変更に対応しづらく、休みを取りたい場合は代わりの人員を探す調整が必要になることがあります。 企業側も、急な欠員が出た際に代替要員を確保するのが難しい場合があります。

3.1.2 希望シフト(自由シフト)制

希望シフト制(自由シフト制とも呼ばれます)は、一定期間ごと(例:2週間ごと、1ヶ月ごと)に従業員から勤務可能な日時を提出してもらい、それを基に管理者がシフトを調整・作成する方式です。 学生アルバイトやパートタイマーが多い飲食店やコンビニエンスストアなどで広く採用されています。

メリット: 従業員は学業や家庭の都合など、プライベートの予定と仕事を両立させやすいのが最大のメリットです。 企業側にとっては、多様なライフスタイルの人材を確保しやすく、柔軟な人員配置が可能になります。

デメリット: 従業員の希望が特定の曜日や時間帯に偏ると、人員が不足する時間帯が出たり、逆に希望通りにシフトに入れず収入が不安定になったりすることがあります。 また、管理者にとっては、毎回のシフト調整と作成に大きな手間と時間がかかる点が課題です。

3.1.3 交代制(2交代制・3交代制など)

交代制は、1日の営業時間を複数の時間帯に分け、従業員をグループごとに交代で勤務させる働き方です。 特に24時間稼働が必要な工場、病院、介護施設、ホテルなどで採用されています。 勤務パターンはあらかじめ決められており、従業員はそのサイクルに沿って勤務します。

  • 2交代制: 1日を日勤と夜勤の2つのシフトに分けて勤務します。1回の勤務時間が12時間近くと長くなる傾向がありますが、その分休日が多くなるケースもあります。
  • 3交代制: 1日を日勤、準夜勤、深夜勤など3つのシフト(各8時間程度)に分けて勤務します。 2交代制に比べて1回あたりの拘束時間は短いですが、勤務時間帯の切り替わりが頻繁になります。

メリット: 企業は24時間体制での稼働やサービス提供が可能になります。従業員は、深夜手当などがつくため、日勤のみの勤務より高い収入を得られる可能性があります。 また、残業が発生しにくい点もメリットです。

デメリット: 夜勤を含む不規則な勤務サイクルにより、従業員の生活リズムが乱れやすく、体調管理への配慮が不可欠です。 また、各シフト間のスムーズな業務の引き継ぎが重要になります。

4. 【徹底比較】変形労働時間制とシフト制のメリット・デメリット

変形労働時間制とシフト制は、どちらも柔軟な働き方を実現するための制度ですが、その特性は大きく異なります。それぞれの制度が持つメリットとデメリットを、企業側(使用者)と従業員側(労働者)の両方の視点から詳しく比較・解説します。自社や自身の働き方にどちらが合っているかを見極めるための判断材料としてご活用ください。

4.1 変形労働時間制のメリット・デメリット

変形労働時間制は、業務の繁閑に合わせて労働時間を調整できる点が最大の特徴です。この特性が、企業と従業員にそれぞれどのような影響を与えるのかを見ていきましょう。

変形労働時間制のメリット・デメリット一覧
対象 メリット デメリット
企業側
  • 業務の繁閑に応じた効率的な人員配置
  • 総労働時間を適切に管理することによる残業代の削減
  • 生産性の向上
  • 導入手続き(就業規則の改定、労使協定の締結など)に手間がかかる
  • 従業員ごとの勤怠管理や残業代の計算が複雑化する
  • 制度への理解不足から従業員の不満につながる可能性がある
従業員側
  • 閑散期には労働時間が短縮され、プライベートの時間を確保しやすい
  • メリハリのある働き方でワークライフバランスを向上させやすい
  • 月や年単位で労働時間が決まるため、休暇の予定が立てやすい
  • 日によって勤務時間が変動するため、生活リズムが乱れやすい
  • 繁忙期には長時間労働や連続勤務が発生し、身体的負担が大きくなる可能性がある
  • 所定労働時間を超えても、法定労働時間の枠内であれば残業代が発生しない場合がある

4.1.1 企業側のメリット:人件費の削減と生産性向上

企業にとって最大のメリットは、業務量の波に合わせて労働時間を配分できることです。 例えば、月末に業務が集中する部署では、月末の所定労働時間を長く設定し、月初の閑散期は短くすることで、月全体で法定労働時間を超えないように調整できます。これにより、繁忙期の時間外労働を抑制し、結果として残業代の削減につながります。

4.1.2 従業員側のメリット:ワークライフバランスの実現

従業員にとっては、閑散期に早く退勤できたり、まとめて休暇を取得しやすくなったりする点がメリットです。 業務が落ち着いている時期にプライベートの時間を十分に確保できるため、メリハリのついた働き方が可能となり、ワークライフバランスの向上に繋がります。

4.1.3 企業側のデメリット:導入と運用の複雑さ

変形労働時間制の導入には、就業規則の変更や労使協定の締結、そして労働基準監督署への届出といった手続きが必要です。 また、導入後も従業員一人ひとりの労働時間が異なるため、勤怠管理が複雑になり、管理者の負担が増加する可能性があります。

4.1.4 従業員側のデメリット:生活リズムの乱れと長時間労働のリスク

日ごとや週ごとに勤務時間が変わるため、生活リズムが不規則になりがちです。 特に育児や介護など、家庭との両立が求められる従業員にとっては、予定が立てにくいという側面があります。 また、繁忙期には法定労働時間の上限(1日10時間、1週52時間など)までの長時間労働が続く可能性があり、心身への負担が懸念されます。

4.2 シフト制のメリット・デメリット

シフト制は、複数の勤務時間帯を設定し、従業員が交代で勤務する働き方です。特に営業時間が長い業種で広く採用されています。 そのメリットとデメリットを詳しく見ていきましょう。

シフト制のメリット・デメリット一覧
対象 メリット デメリット
企業側
  • 長時間営業や24時間体制に対応できる
  • 必要な時間帯に必要な人員を配置でき、人件費を最適化できる
  • 多様な働き方の提供により、人材を確保しやすい
  • シフト作成と調整に大きな手間と時間がかかる
  • 従業員の希望が偏ると、人員配置が困難になる
  • 急な欠員が出た際の代替要員の確保が難しい
従業員側
  • 自分の都合に合わせて勤務希望を出せる(希望シフト制の場合)
  • 平日に休みを取りやすいなど、プライベートの予定を調整しやすい
  • 深夜勤務などで手当がつき、収入を増やせる可能性がある
  • 希望通りのシフトに入れない場合があり、収入が不安定になりやすい
  • 交代制勤務の場合、生活リズムが不規則になりやすい
  • 急なシフト変更を依頼されることがある

4.2.1 企業側のメリット:柔軟な店舗運営と人件費の最適化

シフト制の大きなメリットは、企業の営業時間に合わせた柔軟な人員配置が可能な点です。24時間営業のコンビニエンスストアや、朝から夜まで営業する飲食店などで効果を発揮します。 顧客が多い時間帯にスタッフを厚く配置し、少ない時間帯は人員を減らすことで、無駄な人件費を抑えつつ、サービスレベルを維持できます。

4.2.2 従業員側のメリット:働き方の自由度

特に希望シフト制の場合、従業員は自身のライフスタイルに合わせて働く日時を申告できるため、学業や家庭、趣味などプライベートとの両立がしやすいというメリットがあります。 また、平日の日中に休みを取れるため、役所や銀行での手続き、混雑を避けた買い物やレジャーなどを楽しみやすい点も魅力です。

4.2.3 企業側のデメリット:シフト管理の負担

シフト制の運用における最大の課題は、シフト作成・管理の煩雑さです。 従業員全員の希望をヒアリングし、スキルや経験を考慮しながら、労働基準法を遵守した公平なシフトを組む作業は、管理者に大きな負担を強います。急な欠勤や退職が発生した際の調整も困難を極めます。

4.2.4 従業員側のデメリット:収入の不安定さと不規則な生活

希望シフト制の場合、他の従業員と希望が重なったり、閑散期で仕事が少なかったりすると、希望通りにシフトに入れず、月々の収入が不安定になることがあります。 また、固定シフト制であっても交代勤務の場合は勤務時間帯が変動し、生活リズムが乱れやすく、体調管理に注意が必要です。

5. 変形労働時間制とシフト制は併用できる?具体的なケースを解説

結論から言うと、変形労働時間制とシフト制は併用可能です。 法律上、この2つの制度は異なる概念であり、組み合わせることでより柔軟な働き方を実現できます。変形労働時間制で労働時間の大枠を定め、その枠内で日々の勤務時間をシフト制で割り振る、という運用が一般的です。 この章では、併用が有効な企業のパターンや、具体的なケースについて詳しく解説します。

5.1 併用が有効な企業の典型的なパターン

変形労働時間制とシフト制の併用は、特に以下のような特徴を持つ企業で効果を発揮します。

  • 繁閑差が激しい業種:季節や月、曜日によって業務量に大きな波があるホテル・旅館業、小売業、飲食業などは、1年単位や1カ月単位の変形労働時間制とシフト制を組み合わせることで、人件費の無駄をなくし効率的な人員配置が可能です。
  • 長時間営業・24時間稼働の職場:工場、病院、介護施設、コンビニエンスストアなど、従業員が交代で勤務する必要がある職場では、交代制シフトが不可欠です。これに変形労働時間制を組み合わせることで、特定の日に法定労働時間を超える勤務を設定しやすくなり、柔軟なシフト作成が可能になります。
  • 多様な職種が混在する企業:例えばIT企業で、開発部門は個人の裁量で働けるフレックスタイム制(変形労働時間制の一種)を、顧客サポート部門は対応時間に合わせて交代制シフトを導入するなど、部署や職種の特性に応じて制度を使い分ける併用も有効です。

5.2 【ケース別】変形労働時間制とシフト制の具体的な併用方法

実際にどのように併用するのか、具体的なケースを見ていきましょう。

5.2.1 ケース1:1カ月単位の変形労働時間制 × 交代制シフト(製造業の工場)

月の前半に受注が集中し、後半は比較的落ち着く24時間稼働の工場を例に挙げます。

項目 運用方法
導入する制度 1カ月単位の変形労働時間制と2交代制シフト(日勤・夜勤)
労働時間の設定 1カ月の総労働時間が「週平均40時間」の枠内に収まるように設定します。例えば、繁忙期である月の前半2週間は1日の所定労働時間を9時間(週45時間)、閑散期の後半2週間は7時間(週35時間)とします。
シフトの割り振り 上記で定めた所定労働時間に基づき、日勤(例:8:00~18:00 ※休憩1時間)と夜勤(例:20:00~翌6:00 ※休憩1時間)のシフトを作成し、従業員を割り振ります。
期待できる効果 業務量の波に合わせて労働時間を調整できるため、繁忙期の残業代を抑制しつつ、閑散期には従業員の負担を軽減できます。

5.2.2 ケース2:1年単位の変形労働時間制 × 希望シフト制(リゾートホテル)

夏休みや年末年始などの特定シーズンが極端に忙しくなるリゾートホテルでの活用例です。

項目 運用方法
導入する制度 1年単位の変形労働時間制と希望シフト制(特にアルバイト・パート向け)
労働時間の設定 1年間の総労働時間が「週平均40時間」を超えない範囲で、月ごとの所定労働時間を設定します。 繁忙期(8月、12月)は労働時間を長く、閑散期(6月、2月)は短く設定し、長期休暇の取得も促します。
シフトの割り振り 正社員は1年単位の変形労働時間制の計画に基づき勤務します。アルバイト・パート従業員からは希望シフトを提出してもらい、繫忙期には通常より多く勤務してもらうなど、柔軟に人員を調整します。
期待できる効果 年間を通じた人件費の最適化と、従業員のワークライフバランス向上が期待できます。季節変動の大きい事業に非常に有効です。

5.3 併用する際の注意点

変形労働時間制とシフト制を併用する際は、管理が複雑になるため、いくつか注意すべき点があります。

  • 就業規則への明記と周知徹底:どの従業員にどの制度が適用されるのか、またシフトの作成手順や周知方法などを就業規則に明確に記載し、全従業員に周知することが不可欠です。
  • 労働時間の事前特定:変形労働時間制では、原則として変形期間が始まる前に各日・各週の労働時間を具体的に特定しておく必要があります。 シフト制を併用する場合でも、勤務シフトのパターンや組み合わせの考え方、作成手続きなどを就業規則で定めた上で、変形期間の開始前までにシフトを確定・周知しなければなりません。
  • 勤怠管理の複雑化への対応:複数の制度が混在することで、労働時間や残業代の計算が複雑になります。手作業での管理はミスにつながりやすいため、勤怠管理システムを導入するなど、正確に管理できる体制を整えることが重要です。
  • 休日・休暇の確保:どのような組み合わせであっても、労働基準法で定められた休日(原則として週に1日)は必ず確保しなければなりません。

6. 自社に合うのはどっち?制度選びのポイント

変形労働時間制とシフト制、どちらの制度が自社に適しているかを見極めることは、生産性の向上、人件費の最適化、そして従業員満足度の向上に直結する重要な経営判断です。それぞれの制度が持つ特性を理解し、自社の業種、事業規模、業務の繁閑、従業員の構成などを多角的に分析して、最適な制度を選択しましょう。

6.1 変形労働時間制が向いている企業の特徴

変形労働時間制は、業務の繁閑に合わせて労働時間を柔軟に調整することで、無駄な残業を減らし、効率的な人員配置を実現することを主な目的としています。 そのため、特定の時期に業務が集中したり、季節によって需要が大きく変動したりする業種に特に適しています。

特徴 具体的な業種・企業の例
季節や月によって業務量の差が激しい 建設業、製造業(特定製品の繁忙期)、ブライダル業、不動産業、運送業(引越業など)
週の中で特定の曜日に業務が集中する 小売業、飲食店、旅館など(従業員30人未満の事業場が対象の「1週間単位の非定型的変形労働時間制」が適する場合がある)
プロジェクト単位で業務が進行し、納期前に多忙になる IT関連業、設計業、デザイン業、コンサルティング業
天候に業務量が左右される 農業、漁業、屋外イベント関連企業

これらの特徴を持つ企業が変形労働時間制を導入することで、繁忙期には所定労働時間を長く設定して業務に対応し、閑散期には労働時間を短縮して従業員の休息を確保するといったメリハリのある働き方が可能になります。 結果として、総労働時間を抑えながら生産性を維持し、残業代の削減にも繋がります。

6.2 シフト制が向いている企業の特徴

シフト制は、複数の勤務時間帯を設定し、従業員が交代で勤務することで、長時間の営業や24時間体制の稼働を可能にする働き方です。 そのため、顧客への対応時間が長いサービス業や、常に稼働が必要なインフラ関連の業種で広く採用されています。

特徴 具体的な業種・企業の例
24時間体制での稼働や長時間の営業が必要 コンビニエンスストア、スーパーマーケット、工場、病院、介護施設、コールセンター、ホテル
パートタイマーやアルバイト従業員の比率が高い 飲食店(ファミリーレストラン、居酒屋など)、アパレル販売、小売業
時間帯によって必要な人員数が異なる 飲食店(ランチタイムとディナータイム)、物流倉庫(荷物の入出庫時間帯)
従業員の多様な働き方のニーズに応えたい 学生や主婦(主夫)が多く働く職場、ダブルワークを希望する従業員がいる企業

シフト制は、従業員一人ひとりの希望に応じて勤務時間を調整しやすいため、多様なライフスタイルを持つ人材を確保しやすいというメリットがあります。 特に、学生や主婦(主夫)層など、働ける時間帯が限られている従業員が多い企業にとっては、柔軟な人員配置を可能にする有効な制度です。

7. 導入・運用する際の注意点

変形労働時間制やシフト制は、導入すれば自動的に効果が出るわけではありません。それぞれの制度の特性を理解し、適切な手順で導入・運用することが、労使双方のメリットにつながります。ここでは、各制度を導入し、円滑に運用していくための具体的な注意点を解説します。

7.1 変形労働時間制を導入する手順とポイント

変形労働時間制の導入は、法律で定められた手続きを正しく踏むことが不可欠です。手順を誤ると制度自体が無効と判断される可能性もあるため、慎重に進めましょう。

7.1.1 導入の4ステップ

変形労働時間制を導入するには、主に以下の4つのステップが必要です。

ステップ 内容 ポイント
1. 制度の検討・選択 自社の業務の繁閑サイクル(週単位、月単位、年単位)を分析し、どの変形労働時間制が最も適しているかを検討します。 従業員の勤務実績を調査し、残業時間の発生傾向などを把握することが重要です。
2. 就業規則の変更と労使協定の締結 決定した変形労働時間制の内容を就業規則に明記し、労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は労働者の過半数を代表する者)と労使協定を締結します。 就業規則には対象労働者の範囲、対象期間、起算日、労働時間などを具体的に定める必要があります。 1ヶ月単位の変形労働時間制では、労使協定ではなく就業規則等への記載でも導入可能です。
3. 労働基準監督署への届出 変更した就業規則と締結した労使協定(種類による)を、所轄の労働基準監督署へ届け出ます。 届出を怠ると罰則が科される可能性があります。 1年単位の変形労働時間制では、対象期間の勤務カレンダーの添付も必要です。 フレックスタイム制(清算期間が1ヶ月以内)など、一部届出が不要なケースもあります。
4. 従業員への周知 導入する制度の内容、変更後の働き方や給与計算について、従業員に丁寧に説明し、理解を得ます。 説明会を開催するなど、労働条件に関わる重要な変更であることを伝え、十分な理解を促す配慮が求められます。

7.1.2 運用上の5つの重要ポイント

制度を適切に運用するためには、以下の点に注意が必要です。

  • 勤怠管理の複雑化への対応

    日ごとや週ごとに所定労働時間が変動するため、勤怠管理が複雑になります。 労働時間の正確な把握と、後述する残業代の正しい計算のために、変形労働時間制に対応した勤怠管理システムの導入を検討することが有効です。

  • 残業代の正しい計算

    変形労働時間制では、残業(時間外労働)の考え方が通常と異なります。 具体的には、以下の3つの基準で時間外労働を判断し、割増賃金を支払う必要があります。

    1. 1日単位:就業規則等で定めた所定労働時間を超えた時間(8時間を超える時間を定めた日はその時間)
    2. 1週間単位:就業規則等で定めた所定労働時間を超えた時間(40時間を超える時間を定めた週はその時間)
    3. 変形期間全体:変形期間における法定労働時間の総枠を超えた時間

    これらの計算は複雑なため、誤った運用をしないよう十分な注意が求められます。

  • 労働時間の繰り越しは不可

    ある日に残業したからといって、別の日の労働時間を短縮して相殺することはできません。 例えば、所定労働時間8時間の日に9時間働いた場合、1時間分は残業となり、別の日に7時間勤務したとしてもその事実は変わりません。

  • 適用対象者の明確化

    変形労働時間制は、必ずしも全従業員に適用する必要はありません。育児や介護を行う従業員など、配慮が必要な従業員を適用除外とすることも可能です。対象者の範囲を就業規則や労使協定で明確に定めておきましょう。

  • 従業員の健康管理

    繁忙期には連続勤務や長時間労働が発生しやすくなる可能性があります。 1年単位の変形労働時間制では、連続勤務日数は原則6日まで(特定期間は最長12日)といった上限が定められています。 制度を運用する際は、従業員の健康状態に配慮し、過重労働にならないよう管理することが重要です。

7.2 シフト制を円滑に運用するコツ

シフト制を円滑に運用するには、従業員の協力が不可欠です。公平性を保ち、働きやすい環境を整えるためのルール作りと工夫が求められます。

7.2.1 シフト作成・運用のルールを明確にする

従業員の不満やトラブルを防ぐため、シフトに関するルールを就業規則に明記し、全員に周知徹底することが重要です。

  • 希望シフトの提出ルール

    希望シフトの提出期限や方法、提出できる休日希望の日数制限などを具体的に定めます。 ルールを設けることで、シフト作成者が従業員の希望を管理しやすくなり、公平性の担保にも繋がります。

  • シフトの決定と通知

    いつまでにシフトを確定させ、どのような方法(掲示、アプリなど)で通知するのかを明確にします。 シフトの通知が遅れると、従業員がプライベートの予定を立てにくくなり、不満の原因となります。

  • 欠員発生時の対応ルール

    急な欠勤者が出た場合のヘルプの依頼方法や、代理を探す際のルールを定めておきます。これにより、現場の混乱を最小限に抑えることができます。

7.2.2 適切な人員配置を心がける

人件費の最適化とサービスの質維持を両立させるためには、戦略的な人員配置が鍵となります。

  • 繁閑に応じた人員配置

    過去の売上データや客数などを分析し、曜日や時間帯ごとの繁閑状況を把握します。 忙しい時間帯には人員を厚くし、閑散時間帯には減らすことで、人件費を抑制しつつ、必要なサービスレベルを維持できます。

  • 従業員のスキルを考慮する

    各従業員のスキルや経験を考慮してシフトを組むことも重要です。 例えば、新人スタッフとベテランスタッフをバランス良く配置することで、業務の安定化や新人教育の機会創出に繋がります。

7.2.3 従業員とのコミュニケーションを大切にする

一方的なシフト作成は、従業員の不満やモチベーション低下を招きます。

  • 希望を尊重する姿勢

    すべての希望を叶えることは難しい場合でも、できる限り従業員の希望に寄り添う姿勢が大切です。 希望が通らなかった場合には、その理由を伝えるなど、丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。

  • 公平性を保つ

    特定の従業員に負担が偏ったり、逆に優遇されたりすることがないよう、公平なシフト作成を意識することが従業員の信頼に繋がります。

7.2.4 シフト管理システムを活用する

手作業でのシフト作成は、時間と手間がかかるだけでなく、ミスも発生しやすくなります。シフト管理システムを導入することで、希望シフトの収集からシフトの自動作成、共有までを効率化できます。 これにより、管理者の負担が軽減され、より戦略的な人員配置の検討に時間を割くことが可能になります。

8. まとめ

本記事では、混同されがちな「変形労働時間制」と「シフト制」の違いについて、法律上の位置づけからメリット・デメリット、導入のポイントまで詳しく解説しました。

最も重要な結論は、変形労働時間制が労働基準法に定められた「労働時間の長さを調整する制度」であるのに対し、シフト制は法律上の定義ではなく「働く時間帯のパターンを決める仕組み」であるという点です。この根本的な違いにより、目的や残業代の計算方法が大きく異なります。

変形労働時間制は、業務の繁閑に合わせて労働時間を効率的に配分し、時間外労働を削減したい企業に向いています。一方、シフト制は、営業時間が長い、あるいは24時間稼働が必要な業種で、従業員の勤務時間を割り振るために用いられます。両者は目的が異なるため、「1カ月単位の変形労働時間制を導入し、日々の勤務をシフトで管理する」といった併用も可能です。

自社に適した制度を選ぶためには、まず事業の特性や従業員の働き方のニーズを正確に把握することが不可欠です。それぞれの制度のメリット・デメリットを正しく理解し、適切な手順で導入・運用することが、企業の生産性向上と従業員の働きやすい環境づくりの両立につながります。

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