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エクセルで在庫管理を効率化する方法と限界を超える解決策

目次
エクセルでの在庫管理は、コストを抑えながら効率的な在庫管理を実現できる手法として多くの企業で活用されています。
本記事では、エクセルを使った在庫管理の基本設定から関数やマクロを活用した自動化テクニック、さらには複数拠点管理や棚卸し効率化まで、実践的な方法を詳しく解説します。
また、エクセル在庫管理の限界についても触れ、在庫管理システムへの移行判断基準も紹介するため、あなたのビジネス規模に最適な在庫管理手法を選択できるようになります。
1. エクセル在庫管理の基本設定と準備
エクセルを使用した在庫管理システムを構築するためには、最初に適切な基本設定と準備を行うことが重要です。この段階で作成する基盤が、後の運用効率や精度に大きく影響します。
1.1 在庫管理表の必須項目と設計
効率的な在庫管理を実現するためには、以下の必須項目を含む在庫管理表の設計が不可欠です。適切な項目設定により、在庫の正確な把握と迅速な検索が可能になります。
項目名 | 説明 | データ型 | 必須度 |
---|---|---|---|
商品コード | 商品を一意に識別するための番号 | 文字列 | 必須 |
商品名 | 商品の正式名称 | 文字列 | 必須 |
分類 | 商品カテゴリー | 文字列 | 必須 |
現在庫数 | 現時点での在庫数量 | 数値 | 必須 |
単位 | 在庫管理の単位(個、箱、kg等) | 文字列 | 必須 |
単価 | 商品1単位あたりの価格 | 数値 | 必須 |
保管場所 | 商品の保管場所 | 文字列 | 推奨 |
安全在庫数 | 最低限確保すべき在庫数 | 数値 | 推奨 |
最終更新日 | データの最終更新日時 | 日付 | 推奨 |
1.1.1 在庫管理表のレイアウト設計
在庫管理表を設計する際は、以下の点を考慮することが重要です。
- A列からL列までの範囲で基本情報を配置
- 1行目には項目名を設定し、太字で強調
- 2行目以降にデータを入力
- 各列の幅を適切に調整し、表示の最適化を図る
- 色分けによる視認性向上(ヘッダー行、警告表示等)
1.2 データ入力フォーマットの統一化
正確な在庫管理を実現するためには、データ入力フォーマットの統一化が極めて重要です。フォーマットの統一により、データの整合性が保たれ、後の集計や分析作業が円滑に行えます。
項目 | 推奨フォーマット | 具体例 |
---|---|---|
商品コード | アルファベット3桁+数字4桁 | ABC1234 |
日付 | YYYY/MM/DD | 2024/03/15 |
数量 | 整数(小数点以下は単位に注意) | 150 |
金額 | 円表示(カンマ区切り) | 1,500 |
分類 | 大分類-中分類-小分類 | 食品-冷凍-野菜 |
1.2.1 データ入力規則の設定
エクセルのデータ入力規則機能を活用することで、入力ミスを防止できます。
- 商品コード:文字列長の制限と形式指定
- 数量:正の整数のみ入力可能に設定
- 分類:ドロップダウンリストによる選択式
- 日付:有効な日付形式のみ受け入れ
- 必須項目:空欄を許可しない設定
1.3 バックアップと保存方法
在庫管理データの保護と継続性を確保するため、適切なバックアップと保存方法の確立が必要不可欠です。データ損失は業務継続に重大な影響を与えるため、複数の保存方法を組み合わせることが推奨されます。
保存方法 | 実施頻度 | 保存場所 | メリット |
---|---|---|---|
自動保存 | リアルタイム | ローカル | 作業中の損失防止 |
日次バックアップ | 毎日 | 外部媒体 | 定期的な保護 |
週次バックアップ | 毎週 | クラウドストレージ | 遠隔地保存 |
月次アーカイブ | 毎月 | 複数の保存先 | 長期保存 |
1.3.1 ファイル命名規則
バックアップファイルの管理を効率化するため、統一されたファイル命名規則を設定します。
- 基本形式:在庫管理_YYYYMMDD_バージョン番号.xlsx
- 具体例:在庫管理_20240315_v1.2.xlsx
- バックアップ用:在庫管理_20240315_backup.xlsx
- 月次保存用:在庫管理_202403_archive.xlsx
1.3.2 クラウドストレージの活用
OneDriveやGoogle Drive等のクラウドストレージサービスを併用することで、以下のメリットが得られます。
- 自動同期によるリアルタイムバックアップ
- 複数デバイスからのアクセス可能
- バージョン履歴の自動保存
- 災害時のデータ保護
- チームメンバーとの共有機能
これらの基本設定と準備を適切に実施することで、効率的で信頼性の高い在庫管理システムの基盤が構築できます。次の段階では、これらの基盤を活用したより高度な機能の実装に進むことができます。
2. エクセル関数を活用した在庫管理の自動化
エクセルの関数機能を効果的に活用することで、在庫管理業務を大幅に自動化できます。手作業による入力や計算のミスを削減し、効率的な在庫管理システムを構築する具体的な方法を解説します。
2.1 VLOOKUP関数による商品情報の自動取得
VLOOKUP関数は、商品コードを入力するだけで商品名や単価などの関連情報を自動的に取得する強力な機能です。在庫管理表において、データ入力の効率化と入力ミスの防止に欠かせません。
基本的な使用方法では、商品マスタ表から商品コードをキーにして商品情報を参照します。例えば、「=VLOOKUP(A2,商品マスタ!A:D,2,FALSE)」という数式により、A2セルの商品コードに対応する商品名を自動表示できます。
引数 | 説明 |
---|---|
検索値 | 商品コード(A2セル) |
範囲 | 商品マスタ表の範囲 |
列番号 | 取得したい情報の列番号 |
検索方法 | 完全一致(FALSE) |
2.1.1 VLOOKUP関数の実践的な応用例
複数の商品情報を同時に取得する場合、VLOOKUP関数を複数組み合わせることで、商品名、単価、仕入先などの情報を一度に表示できます。これにより、在庫管理表の入力作業時間を大幅に短縮できます。
また、IFERROR関数と組み合わせることで、存在しない商品コードが入力された場合のエラー処理も可能です。「=IFERROR(VLOOKUP(A2,商品マスタ!A:D,2,FALSE),”商品コードを確認してください”)」とすることで、エラー時に分かりやすいメッセージを表示できます。
2.2 SUMIF関数で在庫数量の自動計算
SUMIF関数は、指定した条件に合致するセルの数値を自動的に合計する関数で、在庫管理において現在庫数の算出に不可欠な機能です。
入庫データと出庫データが混在している場合でも、SUMIF関数を使用することで商品別の正確な在庫数量を自動計算できます。基本的な構文は「=SUMIF(商品コード範囲,対象商品コード,数量範囲)」となります。
計算内容 | 数式例 |
---|---|
入庫数量合計 | =SUMIF(C:C,”入庫”,D:D) |
出庫数量合計 | =SUMIF(C:C,”出庫”,D:D) |
現在庫数 | =入庫合計-出庫合計 |
2.2.1 SUMIFS関数による複数条件の集計
より高度な在庫管理を行う場合、SUMIFS関数を使用することで複数の条件を組み合わせた集計が可能です。例えば、「特定の商品コードかつ特定の期間」といった条件での在庫数量計算ができます。
「=SUMIFS(数量範囲,商品コード範囲,対象商品コード,日付範囲,”>=2024/1/1″,日付範囲,”<=2024/12/31″)」という数式により、2024年の特定商品の入出庫数量を集計できます。
2.3 IF関数による在庫アラート機能
IF関数を活用することで、在庫数量が設定した安全在庫を下回った場合に自動的にアラートを表示する機能を実装できます。これにより、在庫切れによる販売機会の損失を防げます。
基本的なアラート機能では、「=IF(現在庫数<安全在庫,”要発注”,”適正”)」という数式により、在庫状況を視覚的に把握できます。
アラート種類 | 条件 | 表示内容 |
---|---|---|
緊急発注 | 在庫数≤最小在庫数 | 「緊急発注」(赤色) |
要発注 | 在庫数≤発注点 | 「要発注」(黄色) |
適正 | 在庫数>発注点 | 「適正」(緑色) |
2.3.1 条件付き書式との組み合わせ
IF関数と条件付き書式を組み合わせることで、在庫アラートをより視覚的に表示できます。セルの背景色を変更したり、文字色を変更したりすることで、一目で在庫状況を把握できる仕組みを構築できます。
また、複数の条件を組み合わせたネストIF関数により、「過剰在庫」「適正在庫」「要発注」「緊急発注」の4段階でアラートを設定することも可能です。
2.4 ピボットテーブルでの在庫分析
ピボットテーブルは、大量の在庫データを効率的に分析するための最適なツールです。商品カテゴリ別、期間別、拠点別など、様々な角度から在庫状況を分析できます。
ピボットテーブルを使用することで、在庫回転率や売れ筋商品の特定、季節変動の把握など、戦略的な在庫管理に必要な分析が可能になります。
分析項目 | 設定方法 |
---|---|
商品別在庫数 | 行に商品名、値に在庫数を設定 |
月別入出庫推移 | 行に月、列に入出庫区分、値に数量を設定 |
カテゴリ別在庫金額 | 行にカテゴリ、値に在庫金額を設定 |
2.4.1 ピボットグラフによる可視化
ピボットテーブルと連動するピボットグラフを作成することで、在庫データの動向を視覚的に把握できます。棒グラフや折れ線グラフを活用することで、在庫推移や商品別の売上動向を直感的に理解できます。
特に、在庫回転率や不良在庫の識別において、グラフ化された情報は経営判断に大きく貢献します。月次や四半期ごとの定期的な分析により、在庫最適化の施策を効果的に実施できます。
3. エクセルマクロによる業務効率化
エクセルマクロを活用することで、在庫管理の定型業務を自動化し、作業効率を大幅に向上させることができます。VBA(Visual Basic for Applications)を使用したマクロ機能により、手作業で行っていた繰り返し作業を自動化し、ヒューマンエラーの削減と作業時間の短縮を実現します。
3.1 入出庫データの自動記録
入出庫データの自動記録機能により、手作業による入力ミスを削減し、リアルタイムでの在庫状況の把握が可能になります。この機能を実装することで、以下のような効果が期待できます。
機能 | 効果 |
---|---|
入庫データの自動記録 | 入荷時の商品情報、数量、日時を自動的にワークシートに記録 |
出庫データの自動記録 | 出荷時の商品情報、数量、出荷先を自動的に記録 |
在庫残高の自動更新 | 入出庫に連動して在庫残高を自動計算・更新 |
履歴管理 | すべての入出庫履歴を時系列で保存・管理 |
具体的な実装方法として、ユーザーフォームを作成し、入出庫情報の入力画面を設置します。入力されたデータは自動的に適切なワークシートに記録され、同時に在庫数量の計算も行われます。また、バーコードリーダーとの連携により、商品コードの自動入力も可能です。
3.1.1 自動記録マクロの主要コード要素
効果的な自動記録機能を実現するために、以下の要素を含むマクロを作成します。
- データ入力フォームの作成
- 入力データの検証機能
- 重複データのチェック機能
- エラーハンドリングの実装
- データベース形式での保存機能
3.2 在庫レポートの自動生成
定期的な在庫レポートの自動生成により、経営判断に必要な情報を迅速に提供できるようになります。この機能により、手作業でのレポート作成にかかる時間を大幅に削減し、より正確なデータ分析が可能になります。
レポート種類 | 内容 | 更新頻度 |
---|---|---|
日次在庫レポート | 当日の入出庫状況、現在庫数、アラート商品一覧 | 毎日自動生成 |
週次在庫レポート | 週間の在庫変動、回転率分析、発注推奨商品 | 毎週自動生成 |
月次在庫レポート | 月間在庫推移、ABC分析、デッドストック分析 | 毎月自動生成 |
カスタムレポート | 特定期間や特定商品群の詳細分析 | 必要に応じて生成 |
自動生成されるレポートには、グラフや表を効果的に配置し、視覚的に理解しやすい形式で情報を提供します。また、PDFやExcelファイルとして自動保存され、関係者への自動配信も可能です。
3.2.1 レポート自動生成の実装手順
効率的なレポート自動生成システムを構築するため、以下の手順で実装を行います。
- テンプレートシートの作成
- データ抽出・集計ロジックの実装
- グラフ・表の自動作成機能
- 書式設定の自動適用
- ファイル保存・配信機能の実装
3.3 定期的な在庫確認の自動化
定期的な在庫確認作業を自動化することで、在庫の精度向上と管理コストの削減を同時に実現できます。この機能により、手作業による棚卸し作業の負担を軽減し、より頻繁な在庫チェックが可能になります。
自動化項目 | 機能詳細 | 実行タイミング |
---|---|---|
在庫アラート機能 | 設定した最低在庫数を下回った商品を自動検出・通知 | 毎日定時実行 |
デッドストック検出 | 一定期間動きのない商品を自動識別・リスト化 | 週次実行 |
在庫差異チェック | 理論在庫と実在庫の差異を自動計算・報告 | 月次実行 |
発注推奨機能 | 発注点を下回った商品の自動リストアップ | 毎日定時実行 |
これらの自動化機能により、在庫管理担当者は例外管理に集中でき、より戦略的な業務に時間を割くことができます。また、システムが24時間稼働するため、営業時間外でも在庫状況の監視が継続されます。
3.3.1 自動確認システムの技術的特徴
効果的な自動確認システムを実現するため、以下の技術的特徴を持つマクロを開発します。
- タイマー機能による定時実行
- 条件分岐による柔軟な判定ロジック
- メール通知機能の実装
- ログ記録機能による実行履歴の保存
- エラー発生時の自動復旧機能
これらのマクロ機能を組み合わせることで、エクセルベースの在庫管理システムでありながら、専用システムに匹敵する自動化レベルを実現することが可能です。ただし、データ量が増大した場合やより高度な機能が必要になった場合は、専用の在庫管理システムへの移行を検討することが重要です。
4. エクセル在庫管理の実践テクニック
エクセルでの在庫管理をさらに効率化するための実践的なテクニックをご紹介します。これらの手法を活用することで、より高度な在庫管理が可能になります。
4.1 複数拠点での在庫管理方法
複数の拠点や店舗を持つ企業では、統一された在庫管理フォーマットと効率的な情報共有システムが重要です。以下の方法により、各拠点の在庫状況を一元管理できます。
4.1.1 拠点別在庫管理表の構築
各拠点の在庫データを統合管理するには、以下の項目を含む標準フォーマットを作成します。
項目 | 内容 | 管理ポイント |
---|---|---|
拠点コード | 各拠点の識別番号 | 統一的な採番ルールの設定 |
商品コード | 全拠点共通の商品識別番号 | マスタデータとの整合性確保 |
拠点別在庫数 | 各拠点の現在在庫数 | リアルタイム更新の仕組み構築 |
安全在庫数 | 拠点別の最小在庫数 | 拠点特性を考慮した設定 |
4.1.2 拠点間在庫移動の管理
拠点間での在庫移動を効率的に管理するため、以下のような移動履歴表を作成します。
- 移動日時の記録
- 移動元・移動先拠点の明記
- 移動商品と数量の詳細
- 移動理由の記録
- 承認者の明記
4.2 棚卸し作業の効率化
定期的な棚卸し作業は在庫管理の精度を保つために不可欠ですが、エクセルの機能を活用することで作業時間を大幅に短縮できます。
4.2.1 棚卸しスケジュール管理
効率的な棚卸しを実現するため、以下のスケジュール管理表を作成します。
管理項目 | 詳細 |
---|---|
棚卸し区分 | 全品目棚卸し、循環棚卸し、抜取棚卸し |
実施予定日 | 年間スケジュールとの連携 |
対象商品カテゴリ | 重要度に応じた分類 |
担当者 | 責任者と作業者の明確化 |
4.2.2 棚卸し差異分析
棚卸し結果の分析には、以下の指標を活用します。
- 差異発生率の算出
- 差異金額の影響度分析
- 差異発生パターンの特定
- 改善策の立案と実行
4.3 発注点管理と自動発注の仕組み
適切な発注点管理により、在庫切れと過剰在庫の両方を防ぐことができます。エクセルの条件分岐機能を活用して、効率的な発注システムを構築します。
4.3.1 発注点の計算方法
発注点は以下の要素を考慮して設定します。
要素 | 計算方法 | 考慮事項 |
---|---|---|
平均使用量 | 過去実績データの分析 | 季節変動、トレンドの反映 |
リードタイム | 発注から入荷までの日数 | 供給業者の納期安定性 |
安全在庫 | 需要変動と供給遅延への対応 | サービスレベルの設定 |
4.3.2 自動発注アラート機能
IF関数を使用して、在庫が発注点を下回った際に自動的にアラートを表示する仕組みを構築します。
- 発注必要商品の一覧表示
- 推奨発注数量の自動計算
- 発注履歴の自動記録
- 納期管理との連携
4.4 在庫回転率の計算と分析
在庫回転率は在庫管理の効率性を測る重要な指標です。エクセルを使用して継続的な分析を行い、在庫の最適化を図ります。
4.4.1 在庫回転率の計算式
在庫回転率の計算には以下の式を使用します。
計算項目 | 計算式 | 単位 |
---|---|---|
在庫回転率 | 売上原価 ÷ 平均在庫金額 | 回転/年 |
在庫回転期間 | 365日 ÷ 在庫回転率 | 日 |
平均在庫金額 | (期首在庫 + 期末在庫)÷ 2 | 円 |
4.4.2 ABC分析による在庫管理
商品を売上高や利益貢献度に応じてA・B・Cの3つのグループに分類し、それぞれに適した管理方法を適用します。
- Aグループ:高頻度での在庫確認と厳密な管理
- Bグループ:定期的な在庫確認と標準管理
- Cグループ:簡易管理と定期的な見直し
4.4.3 在庫効率性の改善策
分析結果に基づいて、以下の改善策を実行します。
改善領域 | 具体的施策 | 期待効果 |
---|---|---|
発注サイクル見直し | 需要パターンに応じた発注頻度の調整 | 在庫削減、保管コスト低減 |
安全在庫最適化 | リードタイムと需要変動の再分析 | 過剰在庫の防止 |
死在庫の処理 | 長期滞留商品の特定と処分 | 資金効率の改善 |
5. エクセル在庫管理の限界と問題点
エクセルによる在庫管理は、小規模な事業者にとって導入しやすい手法である一方で、事業規模の拡大や業務の複雑化に伴い、深刻な課題が顕在化してきます。これらの限界を理解し、適切な対策を講じることが重要です。
5.1 データ量制限による処理速度低下
エクセルには明確なデータ量制限があり、大量のデータを扱う際の処理速度低下は避けられない問題です。マイクロソフト社の公式仕様によると、Excel 2019では以下のような制限があります。
制限項目 | 上限値 | 実用的な限界 |
---|---|---|
最大行数 | 1,048,576行 | 約10万行(快適な動作) |
最大列数 | 16,384列 | 約100列(管理しやすい範囲) |
ファイルサイズ | 2GB | 約50MB(処理速度を考慮) |
データ量の増加に伴い、以下のような問題が発生します。
- ファイルの開閉に時間がかかる
- 関数の計算処理が遅くなる
- 並べ替えやフィルタリングの動作が重くなる
- メモリ不足によるアプリケーションの強制終了
- バックアップ作成時間の長時間化
特に、月間取扱商品が500種類を超える企業では、処理速度の低下が業務効率に大きな影響を与えることが多く報告されています。
5.2 リアルタイム更新の困難さ
エクセルでは複数ユーザーによる同時編集やリアルタイムでの情報共有が困難で、正確な在庫管理の妨げとなります。主な問題点は以下の通りです。
問題点 | 具体的な影響 | 発生頻度 |
---|---|---|
ファイル共有の制限 | 一度に一人しか編集できない | 毎日 |
データ同期の遅延 | 最新情報の反映が遅れる | 随時 |
バージョン管理の複雑化 | 古いデータでの作業リスク | 週1-2回 |
複数拠点での情報共有困難 | 拠点間での在庫状況把握の遅れ | 毎日 |
これらの問題により、以下のような業務上の支障が発生します。
- 在庫数の二重カウントや漏れ
- 発注タイミングの判断ミス
- 営業担当者への情報提供の遅れ
- 棚卸し作業での不整合
- 顧客からの問い合わせへの対応遅延
5.3 ヒューマンエラーのリスク
手作業による入力が中心となるエクセル在庫管理では、ヒューマンエラーが頻繁に発生し、業務の精度低下や損失につながります。
エラーの種類 | 発生原因 | 影響度 |
---|---|---|
数値入力ミス | 手入力時の桁間違い、誤入力 | 高 |
計算式の破損 | セルの削除、移動による式エラー | 極高 |
データの重複入力 | 同じデータの複数回入力 | 中 |
単位の統一不備 | 個数、箱数、ケース数の混在 | 高 |
一般的な中小企業での調査結果によると、以下のような頻度でエラーが発生しています。
- データ入力ミス:週に2-3回
- 計算式の破損:月に1回
- ファイルの上書き保存ミス:月に1-2回
- バックアップ忘れ:週に1回
これらのエラーは、在庫不足による販売機会の損失や、過剰在庫による資金の無駄遣いなど、直接的な経済損失につながる重大な問題です。
5.4 複数人同時作業での課題
チーム作業が必要な在庫管理において、エクセルの共有機能には根本的な限界があり、効率的な協業を阻害する要因となります。
課題 | 詳細 | 解決の困難度 |
---|---|---|
同時編集の制限 | 複数人での同時作業が不可能 | 極高 |
アクセス権限の管理 | 細かい権限設定ができない | 高 |
作業履歴の追跡困難 | 誰がいつ何を変更したか不明 | 高 |
ファイルロックの問題 | 一人の作業中は他の人が待機 | 中 |
複数人での作業において発生する具体的な問題は以下の通りです。
- 入荷担当者がデータ入力中に出荷担当者が待機を余儀なくされる
- 営業担当者が在庫確認をしたくても、経理担当者の作業終了を待つ必要がある
- 拠点間での情報共有に時間がかかり、意思決定が遅れる
- 責任の所在が不明確になり、データの信頼性が低下する
- 作業効率の低下により、本来の業務に集中できない
従業員数が10名を超える企業では、これらの問題が顕著に現れ、業務効率の大幅な低下を招くことが多く報告されています。また、在庫管理の精度低下により、顧客満足度の低下や売上機会の損失といった深刻な経営課題に発展するケースも少なくありません。
6. 在庫管理システムへの移行判断
エクセルでの在庫管理が限界に達した際の適切な移行判断は、企業の業務効率化と競争力維持において重要な意思決定となります。システム導入のタイミングを見極め、コストパフォーマンスを正確に評価することで、最適な在庫管理環境を構築できます。
6.1 システム導入のタイミング
在庫管理システムの導入を検討すべき明確な指標として、以下の判断基準があります。
判断基準 | エクセルの限界値 | システム導入推奨タイミング |
---|---|---|
取扱商品数 | 100商品以下 | 150商品以上 |
月間取引件数 | 500件以下 | 800件以上 |
年商規模 | 5,000万円以下 | 1億円以上 |
管理担当者数 | 2名以下 | 3名以上 |
拠点数 | 1拠点 | 2拠点以上 |
特に重要な判断ポイントとして、在庫管理にかかる作業時間が週20時間を超えた場合、または月次の棚卸し作業に2日以上を要する場合は、システム導入による効率化効果が期待できます。
6.1.1 業種別の導入タイミング
業種によって在庫管理の複雑さが異なるため、導入タイミングも業種特性を考慮する必要があります。
業種 | 特徴 | 推奨導入規模 |
---|---|---|
製造業 | 原材料・仕掛品・完成品の管理 | 年商5,000万円以上 |
小売業 | 季節変動・トレンドの影響大 | 商品数50種類以上 |
卸売業 | 大量取引・多品種少量 | 年商1億円以上 |
EC事業 | リアルタイム在庫更新必須 | 月間注文数300件以上 |
6.2 コスト対効果の検証方法
在庫管理システム導入の投資判断において、定量的な効果測定が重要です。初期投資と運用コストに対する具体的な効果を数値化して評価します。
6.2.1 導入コストの内訳
コスト項目 | クラウド型(年額) | オンプレミス型(初期) | 備考 |
---|---|---|---|
ライセンス料 | 36万円~240万円 | 100万円~1,000万円 | ユーザー数・機能による |
初期設定費 | 10万円~50万円 | 50万円~500万円 | カスタマイズ度合いによる |
研修・導入支援 | 5万円~30万円 | 20万円~100万円 | 従業員数による |
保守・サポート | 月額3万円~20万円 | 年間20万円~200万円 | サポートレベルによる |
6.2.2 効果の定量化方法
システム導入による効果を以下の指標で測定し、投資回収期間を算出します。
効果項目 | 測定方法 | 期待効果 |
---|---|---|
作業時間削減 | 導入前後の作業時間比較 | 50~70%削減 |
在庫削減効果 | 平均在庫金額の変化 | 15~25%削減 |
欠品率改善 | 欠品発生件数の変化 | 80%以上改善 |
棚卸し精度 | 理論在庫と実在庫の差異 | 誤差1%以下 |
ROI(投資利益率)の計算式:ROI = (年間効果額 – 年間運用コスト)÷ 初期投資額 × 100
6.3 システム選定のポイント
適切なシステム選定のため、以下の要素を総合的に評価することが重要です。
- 既存システムとの連携性:会計システムや販売管理システムとの連携可能性
- カスタマイズ性:自社業務フローに合わせた機能追加や変更の柔軟性
- 拡張性:将来の事業拡大に対応できる機能や容量の拡張性
- サポート体制:導入時および運用時のサポート充実度
- セキュリティ:データ保護やアクセス制御の安全性
- ユーザビリティ:操作の簡便性と従業員の習得しやすさ
特に重要なのは、3年後の事業計画を見据えたシステム選定です。現在の規模だけでなく、将来的な成長を考慮したシステム選択により、再導入のコストを回避できます。
また、無料トライアルやデモンストレーションを活用し、実際の業務フローでの使用感を確認することで、導入後のミスマッチを防げます。システム選定時には、現場担当者も含めた評価チームを構成し、多角的な視点での評価を行うことが成功の鍵となります。
7. まとめ
エクセルでの在庫管理は、VLOOKUP関数やSUMIF関数を活用することで効率化が可能です。マクロを使用すれば入出庫データの自動記録や在庫レポートの自動生成も実現できます。しかし、データ量の増加による処理速度低下や複数人での同時作業時の課題、リアルタイム更新の困難さなど限界も存在します。従業員数や取扱商品数が増加した場合は、専用の在庫管理システムへの移行を検討することが重要です。

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