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BUSINESS

世界で進む「グリーンウォッシュ」対策の最前線

 

世界で進む「グリーンウォッシュ」対策の最前線

SDGsやサステナブルという言葉が、商品やサービスに欠かせない売り文句になりつつある。

しかし、実態がないもしくは到底環境に優しいとは言えないのにもかかわらず、環境や人々の体に良いと見せかける「グリーンウォッシュ」が世界各地で横行し、社会問題化している。欧米では一部企業のマーケティング手法に批判が集まり、取り締まり強化の波はアジアでも例外ではない。

今回は実際のグリーンウォッシュを例に挙げながら、グリーンウォッシュを見極めるために必要な眼力を身につけていこう。

“エコである”と見せかけるグリーンウォッシュとは

グリーンウォッシュは、英語ではGreenwashingと書き、「Green(環境にいい)」と「Whitewashing(不都合な事実や要素を隠蔽する)」を組み合わせた造語だ。実は1970年代から存在しており、日本ではSDGsウォッシュと呼ばれることもある。

多くの企業や組織が、環境に優しい姿勢をアピールするために、広告やPRの一環で「グリーン」「サステナブル」「エコ」「持続可能」「エシカル」といったキーワードを用いて、エコフレンドリーな企業イメージを演出する。しかし、実態が伴わなかったり、実際には過大に環境に負荷を与えていたり、自社に都合のいい数値に過小評価したりするなど、さまざまなケースが全世界で指摘されている。

身近な例だと、「オーガニック」や「自然由来」というキーワードをイメージしてほしい。オーガニックの文字が大きく記載されていれば、あたかもオーガニック成分だけで作られた環境に優しい商品だと誤認しやすい。

日本には食品に対するオーガニックの記載ルールはあるものの、化粧品や衣類などには基準や罰則規定はまだないのが現状だ。そのため、ごくわずかさえ含んでいれば「オーガニック」と記載できてしまう。

2050年までに温室効果ガスの排出ゼロを目指すGX(Green Transformation、グリーントランスフォーメーション)が叫ばれ、企業や組織の社会的責任を強調する現代において、信頼性や透明性がますます重要視されている。

グリーンウォッシュは世界中で絶えず起き続けている

グリーンウォッシュを見抜くには、インターネットリテラシーと同じように正しく疑うことが必要だ。ここで、グリーンウォッシュと指摘された実例をいくつか紹介する。どんな点に疑いを持つべきかをイメージを膨らませよう。

コカ・コーラ:グリーンなラベル

コカ・コーラは、環境保護団体や活動家から「世界をプラスチックで汚染している企業」として、一挙手一投足が注目されている。

2023年にエジプトで開催されたCOP27の後援にも名を連ねたが、年1200億本のペットボトルを生産する同社には、企業として他にやるべきことがあるなどの批判が集まった。さらには、コカ・コーラの後援を受け入れたCOP自体の透明性にも疑問が投げかけられた。

H&M:不透明なサステナビリティ数値

アパレル業界世界売上高ランキングで第2位のスウェーデン企業H&Mは、店舗での衣料品回収や持続可能性素材を利用したアイテムを数多く発表している。2020年には、Tシャツ9,400万枚分に相当する18,800トンの不要な衣類や布地を回収した(※1)。

しかし、同社が主張するサステナビリティに関する数値の透明性に疑問を呈する声が止まず、アメリカ国内で集団訴訟を提起されている(※2)。

Ryanair:ヨーロッパで最も二酸化炭素の排出量が少ない?

アイルランドの格安航空会社Ryanairは、「ヨーロッパで二酸化炭素の排出量が最も少ない航空会社」とした宣伝を打ち出すも、イギリスの英国広告基準局(ASA)が直ちに広告を禁止した。

航空会社業界による二酸化炭素の排出量が非常に多いことは特筆するまでもないが、ASAは航空会社に対して「環境に優しい」「持続可能な選択肢」といった表現を避けるよう求めている(※3)。

日本ゴミ袋及びレジ袋の販売事業者:景品表示法違反

グリーンウォッシュは、決して海の向こうでだけ起きているのではない。

消費者庁は「生分解されるので地球に優しい」などと根拠なく表示したとして、2022年12月に景品表示法違反で日本国内の企業2社に措置命令を行っている(※4)。

グリーンウォッシュを見抜く方法はないのか

私たちが購入前にグリーンウォッシュを疑って、本当かどうか検証してから商品やサービスを購入することは非常にハードルが高い。企業が「環境に優しい」といえば、どうしてもそれを信じざるを得ない。

ただ、私たちにできることは数多くある。簡単なところだと、聞こえのいい、具体的な数字や計画がない抽象的な表現に「本当だろうか」と疑問を投げかけてみることだ。

国連は、企業が行うグリーンウォッシュは気候変動への取り組みに懸命に取り組んでいる企業や団体の足枷になると指摘する。

その上で、グリーンウォッシュを行う企業の典型的な例を7つにまとめている(※5)。

・企業の汚染排出量を正味ゼロにする予定であると主張する
・企業の使用材料について、意図的に曖昧または具体的ではない
・「グリーン」や「エコフレンドリー」といった言葉を意図的に使う
・些細な改善が大きな影響を与えるかのように見せかる、または最低限の規制要求事項を満たした製品をあたかも基準よりも著しく優れているかのように宣伝する
・単一の環境への影響を強調し、他の影響を無視する
・製品とは無関係な違法行為や非標準的行為を回避していると主張する
・環境負荷の高い高排出工場で生産されたリサイクル素材で作られた衣類など、製品のサステナビリティ属性をブランド活動と切り離して伝える(またはその逆)

さらに、消費者が「詳しく知る」「賢くお金を使う」「製品のライフサイクルを考慮する」「透明性と説明責任」の4つを意識することも重要だとする。

一消費者が直ちにグリーンウォッシュを見分けるのは、並大抵のことではないが、こうした傾向や気をつけるべきポイントを知っておくだけでも、悪意のあるグリーンウォッシュを排除することにつながっていく。

グリーンではなく「透明性」が求められる時代

EUでは2023年5月、消費者保護を目的として、根拠のない環境に関する主張を禁止する規制強化案を賛成多数で可決した(※6)。これによりグリーンウォッシュに対して法律上より厳しい規制がひかれることになる。

アメリカでは、米国連邦取引委員会がグリーンマーケティングについて規定する「Green Guides」(※7)が改定されることが決まっており、グリーンウォッシュに対してより明確で断固たる規定が期待されている。

日本では人々が取り憑かれたようにSDGsのピンバッチを付けたり、「SDGs」をアピールした番組や企画がコンテンツのように消費されていたが、これからはそれだけでは企業も消費者もそれぞれの責任を果たしているとはいえない。

2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、持続可能な商品やサービスはこれからどんどん増えていく。企業もこぞって自社のサステナブルな活動をアピールしてくることだろう。

企業は透明性の高い数値や正確なデータで自社のグリーンな活動を裏付け、リスクを回避する。消費者は持続可能性への知識をアップデートしながら、企業が信頼できる証拠を提示しているか目を光らせながら、買い物を投票に使う。グリーンウォッシュのない未来のためには、それぞれが役割をどう果たすのかが鍵になるだろう。

参考文献

※1 https://www2.hm.com/ja_jp/sustainability-at-hm/our-work/close-the-loop.html
※2 https://www.wwdjapan.com/articles/1477595
※3 https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms209_221223_01.pdf
※4 https://www.reuters.com/business/aerospace-defense/greenwashing-cases-against-airlines-europe-us-2023-09-13/
※5 
https://www.un.org/en/climatechange/science/climate-issues/greenwashing
※6 https://www.sustainablebrands.jp/news/us/detail/1215999_1532.html
※7 https://www.ftc.gov/news-events/topics/truth-advertising/green-guides

WRITING BY

Ayaka Toba

編集者・ライター

新聞記者、雑誌編集者を経て、フリーの編集者・ライターとして活動。北欧の持続可能性を学ぶため、デンマークのフォルケホイスコーレに留学し、タイでPermaculture Design Certificateを取得。サステナブルな生き方や気候変動に関するトピックスに強い関心がある。

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