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AIでも超難解。複雑すぎる日本の直通運転事情

Long-exposure view of a high-speed monorail curving through a neon-lit tunnel at night, with vibrant purple and orange light trails conveying motion, speed and futuristic urban transit.

AIはビジネスだけでなく、日常生活やビジネスシーンにも浸透しつつある。それでも、まだまだAIでは及ばない分野もある。

その一つが鉄道業界だ。先日、インテックス大阪で行われた「第二回鉄道技術展・大阪2026」を取材した。その際、某大手私鉄が主要駅でダイヤや運賃などを案内するAIロボットを紹介していた。担当者から「自社線内は対応できるが、乗り入れ先の相手社線はシステムが難しい」という趣旨の回答が得られた。

日本の鉄道路線は、AIが困惑するほど複雑なのだ。この記事では、身近な直通運転の観点から、日本の鉄道システムを紹介したいと思う。

そもそも国内なのに、鉄道会社同士でどれだけシステムが異なるのか

An underground train leaves in Athens, Greece.

話に入る前に、直通運転の定義を確認したい。直通運転は2社以上の鉄道事業者がいて、相手方の路線に乗り入れる運行形態を指す。直通運転には2種類、「相互直通運転」と「片乗り入れ」が存在する。相互直通運転は字のごとく、お互いの列車が相手方の路線に乗り入れる。一方、片乗り入れは、ある鉄道事業者の車両が一方的に、相手社線に乗り入れる。ちなみに、相互直通運転と片乗り入れは圧倒的に前者が多い。

直通運転は異なる鉄道事業者で行われるが、会社間のシステムは大きく異なる場合が多い。東京メトロ東西線とJR線との相互直通運転を例に挙げると、東西線は中野~西船橋間を結び、両端部で実施している。西側はJR中央・総武緩行線の中野~三鷹間、東側はJR総武線の西船橋~津田沼間、東葉高速鉄道の西船橋~東葉勝田台間となる。

JRと東京メトロ東西線の間では、様々な点でシステムが異なる。まずは種別だ。確かに、JR線と東西線の間には快速列車は存在するが、JR線内は「快速」ではなく「普通列車」として運行される。

また、東西線内にはJRのような特別料金が必要な特急は存在しない。運賃体系もJRと東京メトロでは大きく異なる。東京メトロは全線共通の乗車距離に応じて一定のキロ地帯ごとに運賃が階段状に変化する「対キロ区間制」を採用している。一方、JRはキロあたりの賃率に乗車区間の営業キロをかける「対キロ制」だ。

関西圏では、近鉄奈良線と阪神本線・なんば線の相互直通運転が知られている。直通列車の代表的な種別は快速急行だが、近鉄側は赤色に対し、阪神側は青色で案内される。マクロな部分では、近鉄の特急は特急券が必要なリクライニングシート車を用いる。一方、阪神の特急は特急券が不要な一般型車両を用いるため、近鉄特急の阪神線への乗り入れは貸切列車を除き、実施されていない。

このように、同じ日本であっても、鉄道事業者が異なるだけで、想像以上の差異が発生しているのだ。

直通運転にあたり、どれだけの調整が必要なのか

A man solo tourist is waiting the train to arrive at the station. He uses the public transportation to explore the city.

これほどまでに鉄道事業者間で差異が存在するため、直通運転を実施するには「調整」が必要だ。最近はめっきり見かけなくなったが、昭和の時代は線路の交換も行われた。1960年にスタートした京成と都営浅草線との相互直通運転では、京成が都営側に合わせるべく、線路の幅を1372ミリから1435ミリに変更した。もちろん、線路幅を変えるために運行を取りやめることはできないため、夜通しの作業が続いた。

平成・令和の時代では、種別の調整が必要なケースが多い。西武池袋線~東京メトロ副都心線~東急東横線~横浜高速鉄道みなとみらい線をまたぐ直通列車「Fライナー」の場合、種別は西武線が快速急行、東京メトロは急行、東急東横線・横浜高速鉄道線は特急となる。どうせなら最優等種別の「特急」でも良さそうだが、そうはいかない。

西武の特急は特急料金が必要なリクライニングシート車で運行するため、特別料金が不要な一般型車両での特急が登場すると、複雑になる。そこで、西武は特別料金が不要な種別の中では最優等種別となる快速急行を選択した格好だ。東急と横浜高速鉄道の特急は従来から特別料金不要なため、Fライナーが特急を名乗っても問題はない。

一方、先述した阪神~近鉄間の快速急行では、桜川~大阪難波間において、「快速急行」の表示の色を変える。神戸三宮行きであれば、近鉄の赤色から阪神の水色に変える。

このように種別の調整は不都合が生じないように芸が細かい。

運賃では合算制が一般的だ。東京メトロ東西線の大手町駅からJR中央・総武緩行線の三鷹駅までは420円だ。これは東京メトロの大手町~中野間210円、JRの中野~三鷹間の210円の合算だ。

一方、ケースによっては運賃が過度に高くなることも考えられるため、一部の区間に対して乗継割引を設定することがある。東京メトロの落合駅、高田馬場駅から中野駅経由で、JRの高円寺~三鷹間の各駅に行く場合は合算額から20円が割引かれる。利用者にとってはありがたい制度だが、例外事項が増えることになり、ルールが複雑になるという側面もある。

複雑な直通運転、学習未達なAIはどこまで対応できるのか

Japan Railway officer working in train station, Underground station operation for station safety for train and traveler

ここまで読むと、いかに直通運転はもちろん、日本の鉄道システムが複雑か、嫌というほど実感できたのではないか。ここでは、身近なChatGPTを用い、どこまで日本の鉄道システムに対応できるのか、試したいと思う。

大阪梅田~山陽姫路間91.8キロを結ぶ、阪神・山陽の直通列車「直通特急」の停車駅を尋ねてみる。直通特急は時間帯により、一部の停車駅が異なることで知られ、そのバリエーションは10種類にもなる。本来なら10種類ごとに種別を与えてもいいが、相手社線の事情を考えると難しい。まさしく、直通運転が生んだ複雑な列車だといえるだろう。

すると、「標準的な速達タイプ」としての停車駅が表示された。停車駅は24駅にものぼり、見事に正解した。また、補足説明として、6駅(西元町、大開、西代、滝の茶屋、荒井、白浜の宮)が列挙され、「時間帯や列車によって次の駅に停車・通過する違いがあります」という回答があった。しかし、厳密に書くと、この回答には誤りがある。なぜなら、平日朝ラッシュ時間帯の一部の大阪梅田行きは甲子園駅を通過するからだ。

次に「時間帯別の停車駅を教えて」と尋ねてみた。時間帯と停車パターンを簡易な表を使って説明してくれたが、これも厳密にいえば正しいとは言えない。ChatGPTは「また列車によっては滝の茶屋・荒井・白浜の宮にも停車します」と回答したが、正確には「3駅停車」「滝の茶屋のみに停車」「荒井・白浜の宮停車」「3駅通過」の4パターンが存在するからだ。さすがのChatGPTもそこまでは見通せなかったようだ。最後に「直通特急の停車駅は何パターンあるか」を尋ねた。すると、5パターンしか表示されなかった。

当然、私は直通特急の回答を間違えたChatGPTを責める気もないし、日常生活において、ここまでマニアックな質問をする機会もないだろう。ただ、直通運転に限らず、日常的な学習未達なChatGPTに鉄道の質問をする際は注意が必要だ。

直通運転という観点から、日本の鉄道の複雑さを解説したが、まだまだAIを悩ませる複雑な要素はたくさんある。また、別の機会に解説したい。

参考資料

国土交通省鉄道局 鉄道運賃・料金制度について
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.soumu.go.jp/main_content/000973903.pdf

東京メトロ 営業のご案内
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.tokyometro.jp/support/guide/operation/pdf/information_20250401.pdf

新田浩之『鉄道直通運転探求読本』(河出書房新社)
新田浩之『列車種別探求読本』(河出書房新社)

Chat GPTの会話
https://acrobat.adobe.com/id/urn:aaid:sc:AP:9a957327-90b7-4b30-ac0b-f15543a5d2a8

WRITING BY

新田浩之

ライター

神戸市在住。2011年関西大学文学部卒業、2013年神戸大学大学院国際文化学研究科修了
。2016年からライター業に従事。2018年からチェコ政府観光局公認のチェコ親善アンバサ
ダーを務める。専門領域は国内の鉄道・交通、中欧・東欧・ロシアの鉄道と旅行。

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