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食品リサイクル法の対象は?SDGsとの関係や企業の取り組みを解説

 

食品関連業者の中には、『食品リサイクル法』がどのような法律なのか、詳しく知らない方もいるでしょう。法律が作られた目的や対象となる業者について押さえておけば、経営上の問題の発生を防ぐ上で役立ちます。そこでこの記事では、食品リサイクル法の基本情報やSDGsとの関係性についてご紹介します。

『食品リサイクル法』の基本情報


食品関連業者にとって、『食品リサイクル法(食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律)』は無視できない法律です。ただ名前は聞いたことがあっても、具体的な中身については知らない方もいるでしょう。自社には関係がないと考えていると、思わぬ失敗につながりかねません。食品リサイクル法の基本情報や対象となる業者、業種ごとの目標などを確認しましょう。

(参考:『食品リサイクル法:農林水産省』

食品ロスの減量や資源の再利用が目的

『食品リサイクル法』は2001年5月1日に施行されました。この法律の趣旨は、食品の製造過程や売れ残り・食べ残しなどにより発生する食品廃棄の抑制と、食品循環資源の再生利用を促進することです。

「食品循環資源」とは、飼料や肥料などの原材料に再生利用が可能な食品廃棄物を指します。「再生利用」には、飼料や肥料などの製造過程でできる燃料・油脂・メタン・エタノールなどを利用したり譲渡したりすることも含まれます。

対象は食品関連事業者

『食品リサイクル法』の対象となるのは、食品製造・流通・外食など、食品関連の事業者全般です。

その中でも、「食品廃棄物などの前年度の発生量が100トン以上」の食品関連事業者は、その発生量や食品循環資源の再生利用などの状況を主務大臣に報告する義務があります。該当する事業者は、『食品廃棄物等多量発生事業者』と呼ばれます。

申請の期限は毎年6月末までです。「農林水産省共通申請サービス」から電子申請ができるので、もし該当する場合には忘れずに申請しましょう。

業種別に目標が定められている

業種によって、目標とする「再生利用等実施率」の数値が異なります。2024年度までの、各業種の目標となる再生利用等実施率は以下の通りです。

・食品製造業:95パーセント
・食品卸売業:75パーセント
・食品小売業:60パーセント
・外食産業:50パーセント

再生利用等実施率は、「その年度の(発生抑制量+再生利用量+熱回収量×0.95+減量量)÷その年度の(発生抑制量+発生量)」という計算式で求められます。熱回収量は省令に定める基準を満たしていなければ、算入できない決まりです。

個々の事業者の目標は「基準実施率」で表されます。基準実施率を求める計算式は、「前年度の基準実施率+前年度の基準実施率に応じた増加ポイント」です。増加ポイントは、以下のように前年度の基準実施率区分によって決められています。

・20パーセント以上50未満:2パーセント
・50パーセント以上80パーセント未満:1パーセント
・80パーセント以上:維持向上

各事業者には、その年度の基準実施率を上回るか最低でも維持することが求められています。

食品業界の食品ロスの量


食品ロスと聞いても、どの程度の量の食品が廃棄されているのか、イメージが湧かない方もいるでしょう。食品業界全体で出る食品ロスの量や、政府が掲げている目標を知れば、対策の必要性を感じられます。食品ロスの量や減量の目標を確認しましょう。

事業系食品ロスは減少傾向

農林水産省が公表している2020年度の食品ロス推計によると、食品ロスの総量522万トンのうち、事業系食品ロスは275万トンです。

業種別に見ると、食品製造業が121万トン、食品卸売業が13万トン、食品小売業が60万トン、外食産業が81万トンです。

食品ロス量の推移(2012年〜2020年)を見ると、2015年から5年連続で減少傾向にあり、2012年に食品ロスの推計を開始して以来、2020年度は最も低い数値となりました。

(参考:『食品ロス量の推移(平成24~令和2年度)|農林水産省』

2030年までに食品ロスの半減が目標

農林水産省は事業系食品ロス削減に関する共通の目標として、2030年までに2000年度比で食品ロス半減を掲げています。

2000年の事業系食品ロス量は547万トンだったので、目標の数値は273万トンです。これまでの企業の努力が目に見える形となり、目標まであと一歩のところまで近付いています。目標達成のために、今後もさらなる取り組みが必要です。

(参考:『食品ロス削減に向けて|農林水産省』/以下のリンクを挿入してください:https://www.maff.go.jp/j/shokusan/ryutu/attach/pdf/buturyu-27.pdf)

『食品リサイクル法』とSDGsの関係


日本では、SDGsが採択される以前から「まだ食べられるものを捨てるのはもったいない」という意識のもと、食品ロスの問題が社会的な注目を集め、リサイクルに取り組んできました。

食品リサイクル法は、SDGsとの関連が深い法律といえます。両者がどのような関係なのか理解するためのポイントを見ていきましょう。

食品ロスの低減はSDGsの目標のひとつ

食品ロスの低減は、SDGsの目標12「つくる責任、つかう責任」で掲げられています。この目標では、持続可能な生産消費形態を確保するために、消費と生産に関する8つのターゲットが設けられています。

ターゲットのひとつに、「小売・消費レベルにおける世界全体の1人当たりの食料の廃棄を半減」があります。食品リサイクル法によって食品ロスを減らす後押しをすることで、SDGsの目標12の達成に貢献できるという流れです。

目標12は、世界的に見てもまだ多くの課題が残る状態となっていて、日本は特に改善が急がれる状態です。各企業で、食品の作りすぎや廃棄問題に対する取り組みが必要とされます。

(参考:『JAPAN SDGs Action Platform | 外務省』

(参考:『Sustainable Development Report 2022』

消費者のSDGsへの意識は高まっている

2022年に内閣府地方創生推進事務局が全国の自治体を対象に行った、『SDGsに関する全国アンケート調査結果』によると、SDGsに関心があると回答した人は1,469人中64.9パーセント、非常に関心があると答えた人は25.4パーセントでした。

同調査でSDGsを知らないと答えた人は1,469人中1人もおらず、ゴールやターゲットの数までといった大まかな認識まで含めると、SDGsが何であるか知っている人は9割以上に上っています。

消費者の意識が高まる中で、何も取り組みを行わないことはビジネスチャンスを逃す結果につながりかねません。企業が食品リサイクル法の順守を通じてSDGsに取り組むことで消費者の新たなニーズを満たし、ビジネスが拡大するきっかけになる可能性があります。

(参考:『SDGsに関する全国アンケート調査 – 地方創生推進事務局』

ESG投資の観点からも重要

ESG投資は以下の3要素(ESG)を、企業の持続的成長に欠かせないものとして評価する投資方法です。

・環境(Environment)
・社会(Social)
・企業統治(Governance)

ESGは企業の持続可能性を評価するポイントであり、SDGsは持続可能な社会を目指す国際的な目標を指します。

その企業の財務情報だけでなく再生可能エネルギーの利用状況や、社会・環境に貢献する技術を提供しているかなど、さまざまな観点から持続可能性がチェックされます。

環境や資源に配慮した経営を行っていると投資家の注目を得やすくなり、企業にとって利益につながるでしょう。

企業にとっての食品ロスを減らすメリット


食品関連業者が食品リサイクル法を守って行動することは、法律上必要な行為です。何も対策を施していない場合、法律違反となる恐れがあります。それだけでなく、食品ロスを減らすメリットを知っていると、全社が一体となって取り組みやすくなります。どのようなメリットがあるのか、見ていきましょう。

企業のイメージアップに役立つ

企業が食品ロスの低減に取り組むことで、社会貢献への意識を持っているとアピールでき、イメージアップに役立ちます。ESG投資を行う投資家や、SDGsへの意識が高い顧客から高い評価を得られるでしょう。

「この企業の商品を買いたい」「この企業に投資したい」など、プラスの感情を抱いてもらえる可能性が高まり、利益の向上にもつながります。

持続可能な取り組みを行っていることで、将来的な経営への不安が小さくなる点もポイントです。社会課題への取り組みを行っている企業には優秀な従業員が集まりやすく、在籍中の従業員の意欲を高める効果も期待できます。

在庫の無駄をなくしコストを削減できる

食品ロスを減らす取り組みを行うことで、結果的に多くのコストを削減できる点もメリットです。食品ロスを減らすには、過剰な発注を行わず使い切れる分だけを仕入れなければなりません。

食品リサイクル法の順守に取り組めば、作りすぎを防ぐため意識して適切な量の材料を保管するようになります。過剰在庫を抱えていると管理費も増大しますが、食品ロスを減らす工夫をすれば無駄な在庫を抱えずに済むようになり、利益の減少を防げます。

廃棄に要するコストが減らせる

食品ロスが減れば、廃棄処分に必要なコストも少なく済みます。廃棄物を処理する際は運搬費・管理費用・人件費など、さまざまなコストがかかります。

ゴミの焼却によって生じる「温室効果ガス」が少なくなり、社会課題の解決に貢献できる点もメリットです。日本政府は2050年までに、カーボンニュートラルの実現を目指しています。温室効果ガスの減少は、SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」にもつながります。

飲食店が食品ロスを減らす方法


飲食店は材料の仕入れや食品の提供を行う過程で、食品ロスが発生しやすくなります。提供した商品の食べ残しも食品ロスに含まれるので、意識して低減に取り組んでいても廃棄が起きやすい状態です。

農林水産省が公表している2020年度の推計を見ても、食品製造業の次に外食産業が多くの食品ロスを出していることが分かります。飲食店が食品ロスを減らすための方法を見ていきましょう。

需要予測の精度を向上させる

無駄な仕入れをせずに済めば、その分コストを減らせます。需要予測を行って商品の供給に過不足がない状態を作ることは、利益の向上や食品ロスの低減に効果的です。

AIツールを活用すると、ベテランの勘だけに頼らない仕入れを実現できます。業務の属人化の解消だけでなく、これまで手作業で行っていた計算を自動化できる点がメリットです。リソースに余裕が生まれ、より重要な仕事に集中できる環境を作れます。

また、AIは人が作業を行う際に起こりがちなミスをしないので、業務効率を向上させられます。需要予測を行う度に学習して精度が向上していく特徴があり、高いレベルでの予測が実現する点も魅力です。

在庫管理を徹底する

食品を扱う業界では、在庫管理を徹底することにより食品ロスを減らせます。材料の開封日時や賞味期限などを把握するため、余った食材の管理方法をチェックしやすい状態にしておきましょう。

材料の情報を記したラベルの活用や、賞味期限が近いものを手前に置いて取り出しやすくするなどの工夫をおすすめします。

余った材料は中身が見えやすいコンテナに保管すると、スムーズな管理が可能です。食品ロスや廃棄が出た際は廃棄量や理由などを記録してデータ化し、分析に生かしましょう。

食べ残し対策に取り組む

飲食店では、顧客が食べ残すと食品ロスが発生します。食べ残し対策を積極的に行って、廃棄量を減らしましょう。宴会やパーティーなどで大人数の食事を提供する際は、メニューの内容や量について幹事と十分にすり合わせます。

ほかにも、持ち帰り用の容器での提供や食べきれるサイズのメニューを選べるように工夫すると食べ残しが減ります。料理の持ち帰りをしてもらう際は加熱された食品を提供し、食中毒のリスクや注意事項を説明しましょう。

「食べきる」メリットになる施策も効果的

完食したらポイントを付与したり、次回の来店時に使える割引クーポンを発行したりするなど、食品を食べきることが消費者側のメリットになる方法を取り入れるのもおすすめです。

食べきったことで得をしたと感じさせるサービスを取り入れると、「食べきれる量を注文しなければ」という意識が消費者に働き、食べ残しが発生しにくくなります。

閉店時間間際や賞味期限間近の商品に関しては、割引販売を行う方法も効果的です。付加価値を与えて、売れ残りによる食品ロスを防止しましょう。

UMWELTの需要予測で食品ロスを減らそう

TRYETINGの『UMWELT』は、需要予測や在庫管理などの業務の効率化を図れるノーコードAIツールです。さまざまなアルゴリズムを使って機械学習や安全在庫計算などを行い、食品ロスを低減するための施策に生かせます。

これまでに社内に蓄積されてきた、売上や出荷数といったデータを使って需要予測を行えます。プログラミングやAIなどに関する専門知識がなくても、ドラッグ&ドロップなどの基本的な動作で扱えるように作られているので、導入のハードルが低い点がポイントです。

料金は定額制となっており、一から自社でAIを開発する場合と比べて、コストを大幅に抑えやすくなっています。

まとめ


『食品リサイクル法』は食品関連業者全般を対象とした法律で、食品廃棄の抑制や食品循環資源の再生利用を目的としています。食品ロスの低減はSDGsやESGの観点からも重要視されています。

ブランドイメージの向上やコストカットに役立つなど、食品ロスの削減に取り組む企業にとってのメリットは決して小さくありません。

食品リサイクル法を守った取り組みを行っているかどうかは、ESGの観点から投資先として適切かどうかを判断するための材料のひとつであり、資金調達のしやすさにも関連する要素です。

食品ロスを減らすには、AIの導入による需要予測の精度向上や、在庫管理の徹底といった行動が求められます。自社に合った対策を講じて、食品リサイクル法の順守に取り組みましょう。

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