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在庫管理の課題を解決するソフトとは?導入効果と失敗しない選び方のポイント

在庫管理の課題を解決するソフトとは?導入効果と失敗しない選び方のポイント

Excelでの在庫管理に限界を感じていませんか?

本記事では、在庫管理ソフトで課題を解決する方法と、自社に最適なソフトの選び方を徹底解説します。クラウド型・オンプレミス型の違いから、目的・業種別の選び方のポイント、おすすめソフト10選の比較まで網羅。この記事を読めば、過剰在庫や人的ミスといった悩みを解消し、業務効率化とコスト削減を実現する最適なソフトが必ず見つかります。

1. こんな課題ありませんか?エクセルでは限界!よくある在庫管理の悩み

多くの企業では、商品の受発注や在庫数をExcel(エクセル)やスプレッドシートで管理しています。手軽に始められる一方で、事業の成長とともに管理が煩雑化し、さまざまな問題に直面していないでしょうか。ここでは、従来の在庫管理方法で起こりがちな代表的な課題を4つご紹介します。自社の状況と照らし合わせながらご確認ください。

1.1 過剰在庫と欠品による機会損失・コスト増

適正な在庫量を維持することは、企業の収益に直結する重要な要素です。しかし、需要の読み間違いや管理の不備により、「過剰在庫」と「欠品(在庫切れ)」という両極端な問題が発生しがちです。これらはどちらも企業の経営を圧迫する大きな要因となります。

過剰在庫は、保管スペースを無駄に占有し、倉庫の賃料や管理にかかる人件費、光熱費などのコストを増大させます。また、長期間保管されることで商品の品質が劣化したり、流行遅れで価値が下がったりするリスクも抱えています。なにより、在庫として眠っている商品はキャッシュフローを悪化させ、企業の資金繰りを圧迫します。

一方で欠品は、販売機会の損失にほかなりません。顧客が欲しいと思った時に商品がないと、売上が立たないだけでなく、顧客満足度の低下やブランドイメージの毀損につながります。最悪の場合、顧客が競合他社に流れてしまう可能性も否定できません。

問題点 引き起こされる主なデメリット
過剰在庫
  • 保管コスト(倉庫賃料、光熱費、保険料)の増大
  • キャッシュフローの悪化(資金の固定化)
  • 商品の品質劣化・陳腐化・廃棄ロス
  • 棚卸作業の負担増加
欠品(在庫不足)
  • 販売機会の損失による売上減少
  • 顧客満足度と信頼の低下
  • 緊急発注による調達コストの増加
  • 生産ラインの停止(製造業の場合)

1.2 数え間違い・入力ミスなど人的エラーが多発

Excelや紙の台帳を使った手作業による在庫管理は、ヒューマンエラーを誘発しやすい環境です。商品の数を数え間違える、Excelシートに数値を入力し間違える、伝票から転記する際にミスをするといった問題は、どんなに注意しても完全になくすことは困難です。

こうした小さなミスが積み重なると、データ上の在庫数と実際の在庫数に「棚卸差異」が生じます。この差異の原因を特定するためには、膨大な伝票を突き合わせたり、再度在庫を数え直したりする必要があり、多大な時間と労力が浪費されてしまいます。結果として、従業員の残業時間が増え、人件費の増加にもつながります。

1.3 担当者不在だと状況がわからない業務の属人化

「在庫のことは、あの担当者にしかわからない」という状況になっていませんか?特定の従業員が独自の方法や個人のPC内にあるExcelファイルで在庫管理を行っていると、業務の属人化が進んでしまいます。

この状態では、その担当者が急に休暇を取ったり、退職してしまったりした場合に、他の誰も在庫状況を正確に把握できず、業務が停滞するリスクがあります。

属人化は、問い合わせ対応の遅れや発注ミスの原因となるだけでなく、組織としてのノウハウが蓄積されないため、長期的な視点で見ても大きな問題です。業務を標準化し、誰もが同じ情報を共有できる仕組みを構築することが求められます。

1.4 リアルタイムな在庫状況が把握できない

手作業での在庫管理では、入出庫があるたびに即時でデータを更新することは非常に困難です。多くの場合、一日の終わりや特定のタイミングでまとめて入力するため、日中のある時点での正確な在庫数をリアルタイムに把握することができません。

このタイムラグは、さまざまな問題を引き起こします。例えば、営業担当が古い在庫情報をもとに受注してしまい、後から欠品が発覚して顧客に謝罪する「空売り」のリスク。あるいは、ECサイトと実店舗で在庫を共有している場合に、一方での販売がもう一方のデータに即時反映されず、売り越しが発生してしまうケースです。迅速な意思決定が求められる現代のビジネスにおいて、リアルタイム性の欠如は致命的な弱点となり得ます。

2. 在庫管理ソフトで課題はこう解決できる!5つの導入効果

Excelや手書き台帳での管理に限界を感じていませんか?在庫管理ソフトを導入することで、これまで抱えていた多くの課題を解決し、業務効率化と経営改善を同時に実現できます。ここでは、在庫管理ソフトがもたらす具体的な5つの導入効果を、課題解決の視点から詳しく解説します。

2.1 効果1:在庫の見える化で適正化を実現

在庫管理ソフト導入の最も大きな効果は「在庫の見える化」です。倉庫や店舗、ECサイトなど、複数の場所に点在する在庫情報をシステム上で一元管理し、リアルタイムで正確な在庫数を把握できるようになります。これにより、これまで勘や経験に頼りがちだった在庫管理が、データに基づいた客観的な管理へと変わります。

在庫が見える化されることで、以下のような課題が解決され、在庫の適正化が進みます。

課題 在庫管理ソフトによる解決策 得られる効果
過剰在庫 滞留在庫や不動在庫を正確に把握し、アラート機能で通知。 保管コストの削減、キャッシュフローの改善、商品の劣化・陳腐化防止。
欠品 リアルタイムの在庫数と安全在庫数を基に、発注が必要なタイミングを自動で通知。 販売機会損失の防止、顧客満足度の向上、緊急発注によるコスト増の回避。

このように、在庫の見える化は、過剰在庫と欠品という二つの大きな問題を同時に解決し、企業の収益性を直接的に向上させる重要な効果をもたらします。

2.2 効果2:バーコード・RFID活用で業務を自動化・効率化

手作業による在庫管理は、数え間違いや入力ミスといった人的エラー(ヒューマンエラー)の温床です。在庫管理ソフトは、ハンディターミナルやスマートフォンと連携し、バーコードやRFIDを活用することで、これらの手作業を自動化・効率化します。

例えば、日々の入出庫作業や、時間のかかる棚卸作業は劇的に変わります。商品をスキャンするだけで、正確な情報が自動的にシステムに登録されるため、作業時間の大幅な短縮と精度の向上が実現します。

作業項目 手作業での課題 バーコード・RFID活用による改善
入庫・検品 伝票との目視確認に時間がかかり、商品や数量の間違いが発生しやすい。 商品をスキャンするだけで瞬時に照合が完了。ミスをその場で発見できる。
出庫・ピッキング ピッキングリストを元に商品を探す手間がかかり、誤った商品を発送するリスクがある。 ハンディターミナルが商品の保管場所(ロケーション)を指示。スキャンによる照合で誤出荷を防止。
棚卸 全商品を数え、リストに手で記入するため、膨大な時間と労力がかかり、数え間違いも多い。 商品をスキャンするだけでカウントが完了。作業時間を数分の一に短縮し、精度も向上。

これらの業務効率化は、従業員の負担を軽減するだけでなく、削減できた時間をより付加価値の高い業務に振り分けることを可能にします。

2.3 効果3:データの一元管理で属人化を解消

「あのベテラン担当者がいないと、在庫の状況が全くわからない」「店舗ごとに管理方法がバラバラで、全社の在庫を把握できない」といった業務の属人化は、多くの企業が抱える深刻な課題です。在庫管理ソフトは、すべての在庫情報を一つのデータベースに集約することで、この問題を根本から解決します。

情報が一元化されることで、誰が、いつ、どこからアクセスしても、同じ最新の在庫情報を確認できるようになります。これにより、以下のようなメリットが生まれます。

  • 業務の標準化:全社で統一されたルールとシステムで在庫管理を行うため、担当者による作業のバラつきがなくなります。
  • 情報共有の円滑化:営業担当者が出先からスマートデバイスで在庫を確認し、顧客に即答するといった迅速な対応が可能になります。
  • 複数拠点管理の効率化:本社にいながら各店舗や倉庫の在庫状況をリアルタイムで把握し、最適な拠点間移動を指示するなど、全社的な視点での在庫最適化が実現します。
  • 引き継ぎの容易化:担当者の急な欠勤や異動、退職が発生しても、業務が滞るリスクを最小限に抑えられます。

データの一元管理は、特定の個人に依存しない、安定的で継続可能な業務体制の構築に不可欠です。

2.4 効果4:需要予測で戦略的な仕入れ・生産計画を立案

在庫管理ソフトの中には、蓄積された過去の販売実績や入出庫データを分析し、将来の需要を予測する高度な機能を備えたものがあります。AI(人工知能)や統計分析モデルを活用することで、勘や経験だけに頼らない、データに基づいた(データドリブンな)発注や生産計画が可能になります。

需要予測機能がもたらす主な効果は以下の通りです。

  • 発注業務の最適化:季節変動やイベント、天候などの要因を考慮して、商品ごとに最適な発注量とタイミングを算出します。これにより、欠品を防ぎつつ、過剰在庫を最小限に抑えることができます。
  • 生産計画の精度向上(製造業):精度の高い需要予測は、生産計画の立案に直結します。必要な原材料や部品の調達を最適化し、生産ラインの稼働率向上やリードタイムの短縮に貢献します。
  • プロモーション計画への活用:「どの商品を、いつ、どれくらい仕入れるべきか」という予測は、効果的な販売促進やキャンペーンの計画立案にも役立ちます。

需要予測機能を活用することで、在庫管理は「守り」の業務から、売上拡大に貢献する「攻め」の戦略的業務へと進化します。

2.5 効果5:データに基づいた迅速な経営判断をサポート

在庫管理ソフトが蓄積・整理したデータは、現場の業務効率化だけでなく、経営層の意思決定においても強力な武器となります。多くのソフトには、経営判断に役立つ指標を可視化するレポート機能や分析機能が搭載されています。

これにより、以下のような経営指標をリアルタイムで把握し、迅速なアクションにつなげることができます。

重要な経営指標 ソフト活用による分析内容とアクション
在庫回転率 商品ごとの在庫回転率を分析し、資金効率の悪い「滞留在庫」を特定。セールや廃棄などの処分判断を迅速に行う。
ABC分析 売上への貢献度に応じて商品をA・B・Cのランクに分類。売れ筋のAランク商品は欠品させず、死に筋のCランク商品は在庫を圧縮するなど、メリハリのある在庫管理戦略を立案する。
キャッシュフロー 過剰在庫の削減により、在庫に固定されていた運転資金を解放。新たな投資や事業展開に資金を振り向けることが可能になる。

正確なデータは、経営の羅針盤となります。在庫管理ソフトを導入することで、変化の激しい市場環境においても、データという客観的な根拠に基づいた、的確でスピーディーな経営判断を下すことが可能になるのです。

3. 在庫管理ソフトの種類と特徴|クラウド・オンプレミス・Excelの違い

在庫管理の方法は、事業の規模や業種によって様々です。

手軽に始められるExcelから、高機能な専用ソフトまで、多くの選択肢が存在します。特に専用の在庫管理ソフトは、提供形態によって大きく「クラウド型」と「オンプレミス型」の2種類に分けられます。

それぞれの特徴を正しく理解し、自社の課題や目的に合った最適な方法を選ぶことが、在庫管理を成功させる第一歩です。ここでは、各種類の特徴、メリット・デメリットを詳しく解説し、比較検討のポイントを明らかにします。

3.1 クラウド型ソフトの特徴・メリット・デメリット

クラウド型在庫管理ソフトは、インターネット経由で提供されるサービスを利用する形態です。自社でサーバーを構築・管理する必要がなく、Webブラウザや専用アプリを通じてどこからでもアクセスできる手軽さが魅力です。多くは月額または年額で利用料を支払うサブスクリプションモデルで提供されています。

クラウド型のメリット・デメリット
メリット
  • 初期費用を抑えられる:サーバーの購入や構築が不要なため、導入コストを大幅に削減できます。
  • 導入がスピーディー:アカウントを契約すればすぐに利用を開始できるため、短期間での導入が可能です。
  • 場所を選ばない:インターネット環境があれば、PCだけでなくスマートフォンやタブレットからも在庫状況を確認・操作できます。
  • メンテナンス不要:システムのアップデートやサーバーの保守はベンダー側で行われるため、自社での管理負担がありません。
  • 情報共有が容易:複数拠点や複数人でもリアルタイムに同じ情報を共有でき、データの齟齬を防ぎます。
デメリット
  • ランニングコストが発生:月額・年額の利用料が継続的にかかります。長期的に見ると総額が高くなる可能性があります。
  • カスタマイズの制限:基本的に提供されている機能の範囲での利用となり、自社の特殊な業務フローに合わせた大幅なカスタマイズは難しい場合があります。
  • インターネット環境が必須:オフライン環境では利用できない、または機能が制限されることがほとんどです。
  • セキュリティポリシーがベンダー依存:データの管理を外部に委ねる形になるため、ベンダーのセキュリティ対策を確認する必要があります。

【こんな企業におすすめ】
初期費用を抑えて素早く導入したい中小企業やスタートアップ、多店舗・複数倉庫の在庫を一元管理したい企業、外出先や現場でスマートフォンを使って作業したい企業に向いています。

3.2 オンプレミス型ソフトの特徴・メリット・デメリット

オンプレミス型在庫管理ソフトは、自社内に設置したサーバーにソフトウェアをインストールして利用する形態です。「パッケージ型」とも呼ばれます。初期投資としてソフトウェアのライセンス費用やサーバー費用がかかりますが、自社の要件に合わせて柔軟にシステムを構築できるのが大きな特徴です。

オンプレミス型のメリット・デメリット
メリット
  • カスタマイズの自由度が高い:自社の業務フローに合わせて、機能の追加や変更を柔軟に行うことができます。
  • 既存システムとの連携が容易:社内の販売管理システムや会計システム、ERP(統合基幹業務システム)などと密接な連携を構築しやすいです。
  • 強固なセキュリティ:社内ネットワーク内でシステムを運用するため、外部からのアクセスを遮断し、自社のポリシーに沿った高度なセキュリティ環境を構築できます。
  • オフラインでも利用可能:インターネット接続に依存しないため、通信環境が不安定な場所でも安定して稼働します。
デメリット
  • 初期費用が高額:ソフトウェアライセンス、サーバー機器の購入、システム構築費用など、導入時にまとまったコストが必要です。
  • 導入に時間がかかる:要件定義からシステム設計、構築、テストといった工程を経るため、利用開始までに数ヶ月単位の期間を要します。
  • 専門知識と運用コストが必要:サーバーの保守・運用やトラブル対応のために、専門知識を持つ社内担当者や外部委託費用が別途必要になります。
  • アップデート対応が自社負担:法改正やOSの更新に伴うシステムの改修は、自社の責任とコストで対応しなければなりません。

【こんな企業におすすめ】
独自の業務フローや特殊な管理項目がある製造業、基幹システムとの連携が必須な大企業、セキュリティ要件が非常に厳しい企業などに向いています。

3.3 Excel管理と専用ソフトの比較

多くの企業が、まず手軽なExcelでの在庫管理からスタートします。しかし、事業が拡大し、取扱品目や取引量が増えるにつれて、Excel管理の限界に直面するケースは少なくありません。ここでは、Excel管理と専用ソフト(クラウド/オンプレミス共通)の違いを項目別に比較します。

比較項目 Excelでの管理 専用ソフトでの管理
リアルタイム性 低い(手動での更新が必要で、情報が古くなりがち) 高い(データ入力後、即時に在庫情報が全社で共有される)
ヒューマンエラー 起こりやすい(入力ミス、数式の削除、転記漏れなど) 防止しやすい(入力規則、バーコード連携、権限設定などでミスを抑制)
情報共有・同時作業 困難(ファイルの同時編集は破損リスクがあり、属人化しやすい) 容易(複数人が同時にアクセス・作業可能。誰がいつ何をしたか履歴も残る)
自動化・効率化 限定的(マクロなど専門知識が必要) 標準機能で可能(バーコード/RFID連携、発注点アラートなど)
データ処理能力 限界がある(データ量が増えると動作が極端に重くなる) 大量のデータを高速に処理可能
セキュリティ 脆弱(ファイル単位のパスワード設定のみで、アクセス制御が困難) 強固(ユーザーごとの詳細な権限設定、操作ログの記録が可能)
コスト ほぼ無料 有料(初期費用や月額費用が発生)

Excelは導入コストがかからないという最大のメリットがありますが、在庫の正確性、業務効率、セキュリティといった面で多くの課題を抱えています。在庫管理の精度を上げ、欠品や過剰在庫による損失を防ぎ、担当者の負担を軽減するためには、事業規模に応じた専用ソフトへの移行が極めて有効な手段と言えるでしょう。

4. 自社に合うソフトはどれ?目的・業種別の選び方

在庫管理ソフトは多種多様で、搭載されている機能や得意な領域も異なります。自社の目的や業種、事業規模に合わないソフトを選んでしまうと、「機能が足りない」「操作が複雑で使われない」といった失敗に繋がりかねません。ここでは、自社に最適なソフトを見つけるための具体的な選び方を「目的別」と「業種別」の2つの軸で詳しく解説します。

4.1 【目的別】選び方のポイント

まずは「なぜ在庫管理ソフトを導入したいのか」という目的を明確にすることが重要です。コスト削減、業務効率化、多店舗展開など、企業が抱える課題によって最適なソフトは変わります。

4.1.1 とにかくコストを抑えたい

「まずはスモールスタートで始めたい」「初期投資や月々のランニングコストをできるだけ抑えたい」という場合は、コストパフォーマンスを最優先に考えましょう。

この目的の場合、大規模なシステム開発が必要なオンプレミス型よりも、初期費用が安く月額制で利用できるクラウド型のソフトが第一候補となります。多くのクラウド型ソフトには、機能やユーザー数に応じた複数の料金プランが用意されています。まずは必要最低限の機能に絞った安価なプランから始め、事業の成長に合わせてアップグレードを検討するのが賢明です。

チェックポイント 解説
料金体系 初期費用無料、または低価格な月額課金(サブスクリプション)モデルか。ユーザー数や商品登録数による従量課金ではないかを確認しましょう。
無料プラン・トライアル 無料プランや長期間の無料トライアル(試用期間)が提供されているソフトがおすすめです。実際の操作感を試し、自社の業務に合うかを見極めることができます。
機能のシンプルさ 機能が豊富なほど高価になる傾向があります。まずは入出庫管理、在庫数確認といった基本的な機能に絞り、シンプルな構成のソフトを選びましょう。

ただし、安さだけで選ぶと将来的に機能不足に陥る可能性もあります。将来の事業拡大を見据え、必要な機能を追加できる拡張性があるかどうかも、事前に確認しておくと安心です。

4.1.2 多店舗・複数倉庫の在庫を一元管理したい

実店舗やECサイト、複数の倉庫など、在庫が複数の拠点に分散している場合、それらの情報を一元管理できるかどうかがソフト選びの生命線です。

各拠点の在庫がリアルタイムで連携されていないと、店舗間の在庫移動(店間移動)が非効率になったり、販売機会の損失に繋がったりします。この課題を解決するには、複数拠点管理に対応したクラウド型の在庫管理ソフトが最適です。インターネット環境さえあれば、どこからでも全拠点の在庫状況をリアルタイムで把握できます。

  • 複数拠点管理機能:各店舗・倉庫の在庫数を個別に、また合計で確認できる機能。
  • 拠点間移動機能:在庫の移動指示や履歴をシステム上で管理できる機能。
  • 権限設定機能:店舗スタッフや倉庫担当者など、役職に応じて閲覧・操作できる情報の範囲を制限できる機能。

これらの機能が備わっているかを確認しましょう。特に、ダッシュボードで全拠点の在庫状況を視覚的に把握できるソフトは、経営判断にも役立ちます。

4.1.3 ECサイトとリアルタイムで在庫連携したい

ECサイト運営において、在庫切れによる販売機会の損失(売り逃し)や、在庫がないのに注文が入ってしまう「売り越し」は、顧客満足度を大きく下げる原因となります。この問題を解決するには、ECサイトの受注情報と在庫情報をリアルタイムで自動連携させることが不可欠です。

選定の際は、自社が利用しているECカートシステム(Shopify、BASE、MakeShopなど)や、出店しているECモール(楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングなど)とのAPI連携に対応しているか必ず確認しましょう。

確認すべき連携機能 具体的なメリット
在庫数の自動更新 ECサイトで商品が売れると、在庫管理ソフトの在庫数が自動で減少。手動更新の手間とミスを削減し、売り越しを防ぎます。
複数ECサイトの一元管理 複数のECサイトに出店している場合でも、全てのサイトの在庫数を一元管理。1つのサイトで売れたら、他のサイトの在庫表示も自動で更新されます。
セット商品への対応 単品商品を組み合わせたセット商品の在庫も自動で計算・管理できるかを確認。ギフト商品などを扱う場合に重要です。

API連携の精度や更新頻度(リアルタイム性)も重要なポイントです。導入前に、連携実績やユーザーの口コミなどを参考にしましょう。

4.1.4 ハンディターミナルやスマホで作業したい

広い倉庫内を移動しながら行う入庫検品、ピッキング、棚卸などの作業を、紙のリストとペンで行うのは非効率で、ミスも発生しやすくなります。

これらの現場作業を効率化したい場合は、ハンディターミナルやスマートフォンに対応した在庫管理ソフトを選びましょう。商品のバーコードやQRコードをスキャンするだけで、正確かつスピーディに作業を完結できます。

  • 専用アプリの有無:iOSやAndroidに対応したスマートフォンアプリが提供されているか。ブラウザ版だけでなく、アプリの方が操作性に優れていることが多いです。
  • バーコード・QRコード読取:スマートフォンのカメラや、Bluetooth接続のスキャナーでバーコードを読み取れるか。
  • オフライン対応:倉庫内で電波が届きにくい場所でも作業を継続でき、オンラインになった際にデータを同期できる機能があると非常に便利です。

現場のスタッフが直感的に使えるかどうかが定着の鍵となるため、無料トライアルなどを活用し、実際の作業環境で操作性(UI/UX)を試すことを強く推奨します。

4.2 【業種別】選び方のポイント

扱う商品の特性や管理方法は業種によって大きく異なります。例えば、製造業では部品や仕掛品の管理が必要ですが、小売業では不要です。自社の業種に特化した機能を持つソフトを選ぶことで、よりスムーズな導入と高い効果が期待できます。

4.2.1 小売業・卸売業

多品種の商品を扱い、店舗とバックヤード(倉庫)の両方で在庫を管理する小売業・卸売業では、販売情報との連携と、商品の鮮度管理が重要になります。

小売・卸売業で重視すべき機能 解説
POSレジ連携 店舗のPOSレジと連携し、商品が売れたタイミングで在庫数を自動的に減らす機能。棚卸作業の負担を大幅に軽減します。
ロット管理・期限管理 商品の入荷日や製造日ごとの「ロット」で管理し、賞味期限や消費期限が近いものから先に出荷する「先入れ先出し」を徹底するための機能。食品や化粧品を扱う場合に必須です。
ABC分析 売上高や販売数に応じて商品をA・B・Cのランクに分け、在庫管理の優先順位を付けるための分析機能。売れ筋商品の欠品防止や、不動在庫の削減に役立ちます。

4.2.2 ECサイト運営

ECサイト運営では、前述の「目的別」で触れたAPI連携が最重要項目ですが、それに加えて受注から出荷までをスムーズに繋ぐ機能が求められます。

ECサイト運営で重視すべき機能 解説
複数ECサイト・カート連携 複数の販売チャネルの在庫情報をリアルタイムで一元化する機能。手作業による在庫調整から解放されます。
受注管理システム(OMS)連携 受注情報を取り込み、ピッキングリストや納品書を自動で作成するシステムとの連携。出荷業務全体の効率化に繋がります。
倉庫管理システム(WMS)連携 外部の物流倉庫(3PL)に発送業務を委託している場合、WMSと連携して出荷指示や在庫情報を共有する機能が必要です。

4.2.3 製造業

製造業の在庫管理は、原材料、部品、仕掛品、完成品と管理対象が多岐にわたり、非常に複雑です。生産計画と連動した管理が不可欠となります。

製造業で重視すべき機能 解説
多様な在庫形態の管理 原材料、部品、仕掛品、半製品、完成品など、製造工程の各段階にある在庫を区別して管理できる機能。
部品表(BOM)管理 一つの製品を製造するために必要な部品や原材料の構成情報を管理する機能。生産計画に応じた必要部品数を自動で算出できます。
ロットトレース機能 製品に問題が発生した際に、どの原材料ロットが使われたかを追跡(トレース)する機能。品質管理やリコール対応に不可欠です。
生産管理システム連携 生産計画や工程の進捗と在庫情報を連携させることで、適切なタイミングでの部品発注や生産調整が可能になります。

4.2.4 倉庫業

自社の在庫だけでなく、複数の荷主から預かった商品を管理する倉庫業では、倉庫内の作業効率化と、荷主ごとの正確な在庫管理が求められます。この場合、在庫管理ソフトの中でも特に倉庫業務に特化した「倉庫管理システム(WMS)」が選択肢となります。

倉庫業で重視すべき機能 解説
複数荷主対応 荷主ごとに在庫情報を完全に分離して管理できる機能。荷主向けの在庫状況レポート出力機能なども重要です。
ロケーション管理 倉庫内のどこに(棚番)、何が、いくつあるかを管理する機能。「固定ロケーション」や「フリーロケーション」など、運用に合わせた管理方法が選べるかがポイントです。
ハンディターミナル連携 ピッキング、検品、棚卸などの庫内作業をハンディターミナルで行うことで、作業の正確性とスピードを向上させます。

5. 在庫管理ソフト導入の失敗事例と対策

在庫管理ソフトは業務効率化の強力な武器となる一方、導入計画や製品選定を誤ると「導入したのに使われない」「かえって業務が煩雑になった」といった失敗に陥る可能性があります。ここでは、よくある3つの失敗事例とその具体的な対策を解説します。自社の導入プロジェクトを成功に導くためのヒントとしてご活用ください。

5.1 失敗事例1:現場の業務に合わず使われなくなった

最も多い失敗が、導入したソフトが実際の現場業務にフィットせず、次第に使われなくなり、結局Excelや手作業での管理に戻ってしまうケースです。高機能なソフトを導入しても、現場の従業員が「使いにくい」「今のやり方と違いすぎる」と感じれば、定着は困難になります。

5.1.1 原因

この失敗の背景には、主に以下のような原因が潜んでいます。

  • 現場の業務フローへの理解不足:経営層や情報システム部門だけで選定を進め、入出庫や棚卸しの具体的な手順、イレギュラー対応など、現場の実態を把握できていなかった。
  • 操作性の問題:UI(ユーザーインターフェース)が複雑で、ITに不慣れな従業員が直感的に操作できなかった。特に、ハンディターミナルやスマートフォンでの操作が煩雑だと、利用が敬遠されがちです。
  • 過剰なカスタマイズへの期待と現実のギャップ:自社の特殊な業務フローに合わせるためにカスタマイズを重ねた結果、システムが複雑化し、かえって使いづらくなった。
  • 導入目的の共有不足:「なぜシステムを導入するのか」「導入によって業務がどう改善されるのか」という目的やメリットが現場に伝わっておらず、従業員の協力が得られなかった。

5.1.2 対策

現場への定着を成功させるためには、導入前の準備が鍵となります。以下のポイントを押さえて、失敗のリスクを回避しましょう。

対策のポイント 具体的なアクション
現場担当者のプロジェクトへの参画 製品選定の初期段階から、実際にソフトを使用する現場の責任者や担当者をメンバーに加え、意見を積極的にヒアリングする。
業務フローの徹底的な可視化 現在の在庫管理業務の流れをすべて洗い出し、「どの業務を」「どのように効率化したいのか」を明確にする。図やフローチャートで整理すると関係者間の認識のズレを防げます。
無料トライアルやデモの活用 複数の候補ソフトについて、無料トライアルやデモを現場担当者と一緒に試す。実際の業務を想定した操作(商品の入庫、ピッキング、棚卸しなど)を行い、操作性やフィット感を確認する。
段階的な導入と十分な教育 まずは特定の商品カテゴリや倉庫に限定して導入する「スモールスタート」で課題を洗い出し、徐々に範囲を拡大する。また、導入前後に十分なトレーニング期間を設け、操作マニュアルを整備する。

5.2 失敗事例2:機能が多すぎて使いこなせない

「大は小を兼ねる」と考え、将来的な拡張性も見越して多機能・高価格なソフトを選んだものの、実際に使う機能はごく一部で、多くの機能が宝の持ち腐れになってしまうケースです。結果として、高い月額費用や保守費用だけがかかり、費用対効果が見合わない状況に陥ります。

5.2.1 原因

  • 導入目的の曖昧さ:「在庫管理を効率化したい」という漠然とした目的しかなく、自社が解決すべき課題と、そのために「最低限必要な機能(Must)」と「あると便利な機能(Want)」が整理できていなかった。
  • 機能の多さ=高性能という誤解:ベンダーの営業担当者に勧められるまま、業界特化の複雑な機能や高度な分析機能を持つソフトを選んでしまったが、自社の業務レベルや規模には過剰(オーバースペック)だった。
  • 操作習得の負担:機能が多いほど設定項目や操作手順が複雑になり、マニュアルを読み解くだけで一苦労。従業員が操作を覚える負担が大きく、結局シンプルな基本機能しか使われなくなった。

5.2.2 対策

自社にとって最適なスペックのソフトを選ぶためには、目的を明確にし、冷静に機能を見極める視点が不可欠です。

対策のポイント 具体的なアクション
導入目的と課題の明確化 「欠品率を5%削減する」「棚卸し作業時間を30%短縮する」など、具体的な数値目標(KPI)を設定する。この目標達成に必要な機能は何か、という視点で製品を評価する。
機能要件の優先順位付け 必要な機能を「Must(必須)」「Want(推奨)」「Nice to have(あれば尚可)」の3段階で整理する。まずはMust要件を満たすソフトに絞り込み、その中で比較検討する。
スモールスタートと拡張性の確認 最初は基本機能のみで安価に始められ、事業の成長や課題の変化に応じて後から機能を追加(オプション契約)できるソフトを選ぶ。将来の拡張性を担保しつつ、初期投資を抑えることができます。

6.3 失敗事例3:導入後のサポートがなく問題解決できない

無事にソフトを導入できたものの、いざ運用を始めると「操作方法がわからない」「システムにエラーが発生した」といった問題が発生。しかし、ベンダーのサポート体制が不十分で、問い合わせてもすぐに対応してもらえず、業務がストップしてしまうケースです。特に導入初期は不明点が多く発生するため、サポート体制の質は極めて重要です。

5.3.1 原因

  • コスト重視によるサポート軽視:初期費用や月額料金の安さだけで製品を選んでしまい、サポートプランの内容や品質を十分に確認していなかった。
  • サポート範囲の認識不足:契約したサポートプランがメール対応のみで電話対応は別料金だったり、対応時間が平日の日中に限られていたりするなど、自社の求めるサポートレベルと乖離があった。
  • 社内の運用体制の不備:「誰がベンダーへの問い合わせ窓口になるのか」「簡単なトラブルシューティングは誰が行うのか」といった社内での役割分担が決められておらず、問題発生時に混乱してしまう。

5.3.2 対策

在庫管理ソフトは導入して終わりではなく、安定して使い続けるための「運用」こそが本番です。ベンダー選定の段階で、サポート体制を厳しくチェックしましょう。

5.3.3 ベンダー選定時のサポート体制チェックリスト

チェック項目 確認すべき内容
サポートチャネル 電話、メール、チャットなど、どのような問い合わせ方法が用意されているか。緊急時に迅速な対応が期待できる電話サポートの有無は重要。
サポート対応時間 平日の日中のみか、土日祝日や夜間も対応可能か。自社の稼働時間と合っているかを確認する。
サポートの範囲と料金 契約プラン内でどこまで対応してくれるのか。操作方法の案内、トラブルシューティング、データ復旧支援など。追加料金が発生するケースも確認する。
SLA(サービス品質保証) 障害発生時の復旧時間や、問い合わせへの一次回答時間など、サービスの品質レベルが保証されているか。クラウド型ソフトでは特に重要。
マニュアル・FAQの充実度 オンラインマニュアルやよくある質問(FAQ)が整備されているか。自己解決できる情報が豊富にあれば、問い合わせの手間を減らせる。

これらの失敗事例と対策を参考に、自社の状況と照らし合わせながら、慎重に在庫管理ソフトの導入を進めることが成功への近道です。

6. まとめ

在庫管理ソフトは、エクセル管理では限界のある過剰在庫や欠品、人的ミスといった課題を解決します。導入により在庫が可視化され、業務効率化や属人化の解消に繋がります。

成功の鍵は、クラウド型やオンプレミス型といった種類、そして自社の業種や目的に最適なソフトを慎重に選ぶことです。本記事で紹介した選び方や失敗事例を参考に、自社の成長を加速させる最適なパートナーを見つけてください。

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