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廃棄ロスの削減はなぜ必要?対策と事例から分かる取り組みのメリット

 

日本は世界的にも食品廃棄量が多い国です。このままでは地球温暖化など地球環境にも影響を及ぼしかねません。では、どのように廃棄ロス削減対策を立てればよいのでしょうか。

この記事では、廃棄ロス削減の必要性とともに、すでに進んでいる国内外の削減事例を紹介します。最後まで読んでいただければ、今日から廃棄ロス削減に取り組めるでしょう。

廃棄ロス削減の必要性


商品の在庫が少ないほど、販売機会ロスが起こりやすくなります。反対に、在庫量を大幅に増やすと余ってしまい、値下げや廃棄をしなくてはなりません。値下げと廃棄で起こる損失を「実質ロス」と呼びます。ここでは、実質ロスに含まれる廃棄ロスの削減について解説します。

日本の食品ロスはどのくらい?

農林水産省と環境省が発表した食品廃棄物の発生状況(2020年度推計)によると、日本で発生する食品廃棄物等は2,372万トンで、そのうち522万トンが可食部分と考えられる食品ロスの量です。

食品関連事業者が出す食品廃棄物等は1,624万トンで、275万トンが食品ロスです。一方、一般家庭から出る食品廃棄物等は748万トンに上ります。食品ロスは247万トンで、国民1人当たりに換算すると、1日に茶わん1杯分のご飯を捨てている状況です。

世界の現状とは

2021年7月、世界自然保護基金と英国で小売業を展開するテスコが発表した報告書によると、世界で25億トンもの食品が食べられずに処分されています。25億トンの内訳は農場が12億トン、貯蔵・加工・製造・流通段階で4億トン、小売・消費段階で9億トンです。

世界的にも廃棄ロスは深刻な問題である一方、10人に1人が飢餓状態で苦しんでいます。先進国では多くの食品を廃棄し、発展途上国は自然災害・貧困・紛争などを理由に食品を入手できない、入手しても施設がなく長期保管できない状況です。

廃棄ロスの原因は?


廃棄ロスは、事業系廃棄ロスと家庭系廃棄ロスに分類できます。家庭から出る家庭系廃棄ロスに対し、事業系廃棄ロスは、食品製造業・食品卸売業・食品小売業・外食産業から出るものです。ここでは、それぞれの廃棄ロスがどのような理由で発生するのかを解説します。

事業系廃棄ロス

事業系廃棄ロスの原因として「規格外品」「売れ残り」「外食先での食べ残し」が挙げられます。

規格外品とは、栄養面・安全性・味などに問題がないにもかかわらず、見た目や大きさが標準品と異なることを理由に除外した商品です。市場に出回る前の工程で発生し、見た目に強いこだわりを持つ日本のような先進国ほど多くなる傾向があります。

売れ残りは、多くの在庫品があるコンビニ・スーパーマーケットで、売り切れずに廃棄する商品を指します。

外食先での食べ残しは、一度に多くの食事を注文することが原因です。初めて行く店では料理の量が分からないため、注意しなくてはなりません。

家庭系廃棄ロス

家庭系廃棄ロスの主な原因は「家庭内での食べ残し」「賞味期限・消費期限切れ」です。

家庭の食事では、作り過ぎや家族の好き嫌いを理由に食べ残しが発生します。体調の悪い家族がいれば食べ切れないこともあり、食事を外で済ませてくる家族がいれば食べ残しが発生するでしょう。

賞味期限・消費期限切れは、買い過ぎや期限・在庫のチェック不足が原因です。賞味期限と消費期限の意味の違いがあいまいな場合も、廃棄ロスの増加につながります。

日付を過ぎると品質が急激に劣化することを表す消費期限と、適切に保管すれば日付を過ぎても食べられる賞味期限との違いをしっかり理解しなくてはなりません。

廃棄ロスを削減するための対策


世界的に見ても廃棄ロスが多い日本は、すぐにでも対策に取り組まなければならない状態です。では、どのような対策を立てればよいのでしょうか。ここからは、廃棄ロス削減に効果的な対策を紹介します。自社で生かせる対策がないかチェックしてみましょう。

売り上げの予測精度を高める

売り上げの予測精度が向上すると、販売機会ロスや実質ロスの削減につながります。売り上げの予測精度を高めるには、POSシステムにある単品データ、イベント要因、気温などのデータが欠かせません。

予測精度が向上するにつれて適切な在庫量を確保できるようになり、消費者が欲しいタイミングで購入できる環境が整います。同時に、廃棄量も最小限に抑えられるでしょう。

ウェザーマーケティングを活用する

天候データを活用する手法をウェザーマーケティングと呼びます。天候は、消費者の購買意欲など行動・心理に影響を与える要因です。天候が売り上げに影響していると考えられる場合、関連付けて対策を立てましょう。

ウェザーマーケティングで精度の高い需要予測が可能になれば、適切な在庫量を準備できるため、販売機会ロスや実質ロスの削減につながります。

飲食店なら天候データを基にクーポンを配布する、飲料メーカーなら気温変化に合わせたキャンペーンを実施するといった対策も可能です。

実態を把握する

イメージが浮かんだ対策にスピーディーに取り組むより、現状を把握した上で対策を練ることが大切です。

まず、現時点で廃棄ロスがどのようなプロセスで起こっているか把握しましょう。POSレジがある店舗なら、POSシステムに蓄積したデータが活用できます。

データは曜日・時間帯ごとに表にまとめ、売れ残り数や品切れのタイミングといった情報も合わせると、販売の実態が分かり、さまざまな予測精度アップに生かせます。

実質ロスを削減する

スーパーマーケットでは、閉店時間が近くなると、生鮮食品を値下げして売り切ります。値下げするほど粗利益は低下しますが、売り切れずに廃棄すれば粗利益はゼロです。

このような実質ロスを防ぐには、値下げ商品の選定・タイミング・価格が大切です。実質ロスを削減することで、廃棄ロス削減につながります。

家庭・企業の双方で協力する

企業だけでなく、消費者の協力も廃棄ロス削減には重要です。家庭でもできる取り組みとして、食品を買い出しに行く前に冷蔵庫の中身を確認し、余分な買い物を避けましょう。商品を購入する際には、手前にある商品を選ぶことで、店舗の廃棄ロスを減らすことができます。

購入後の保管方法もポイントです。野菜の種類によって保管方法を変える、小分け保存をするなど、できる限り長持ちするように工夫しましょう。料理する際は、食べ切れる量を作ることが大切です。食べ残しは、廃棄前にリメイクしてみましょう。

海外で取り組まれている廃棄ロス削減の事例

米国・英国・フランスで進んでいる廃棄ロス削減事例を紹介します。

米国では「2030年までに廃棄ロスを50%削減する」という目標を立て、米環境保護庁・米農務省・米食品医薬品局が連携を取って食品ロス削減に取り組んでいます。

また、米国の学校では、苦手を理由に食べ残した食品の廃棄ロス問題を抱えていました。食べる前に戻すスペース「シェアテーブル」を設け、食べたい生徒が食べられる仕組みにしたことで廃棄ロス削減に成功しています。

英国で行われているのは、食品廃棄物削減ロードマップに基づいて、それぞれの企業が目標を掲げる取り組みです。廃棄食品を堆肥に変える取り組みも行っています。

フランスは、2016年に食品廃棄禁止法を制定しました。この法律により、延べ床面積400平方メートル以上のスーパーマーケットは食品廃棄ができなくなり、飼料・肥料としての再利用やフードバンクへの寄付をしなくてはなりません。

日本企業の廃棄ロス削減の取り組み事例


廃棄ロス削減に取り組んでいるのは、海外だけではありません。国内でも卸売業、スーパーマーケット、飲食店などで廃棄ロス削減に取り組む企業があります。ここで紹介する企業の事例を参考に、自社での取り組みに生かしましょう。

株式会社あきんどスシロー

回転すしチェーンを展開する株式会社あきんどスシローは、回転すし総合管理システムを導入して廃棄ロス削減に取り組んでいます。

以前は、店長の感覚を頼りにすしを選び、レーンに流していました。システム導入後は、何時にどの商品が売れるのか、日々蓄積したデータを活用することで消費者が求める商品を最適なタイミングで流せます。高精度な予測が実現したことで、廃棄ロス削減が実現しました。

株式会社セブン‐イレブン・ジャパン

株式会社セブン‐イレブン・ジャパンは、素材・製造工程・温度管理を見直すことで、品質はそのままに消費期限の延長に成功しています。

他にも、フライヤー商品提供時に使用する食用油や販売期限切れ商品の飼料などへのリサイクルに取り組み、2021年度には食品リサイクル率50.3%を達成しました。

キユーピー株式会社

食品メーカーのキユーピー株式会社は、賞味期限の延長や表記変更によって廃棄ロス削減に取り組んでいます。

マヨネーズの原料である油に溶けている酸素を取り除く製法を開発し、10か月だった賞味期限を12か月まで延ばすことに成功しました。年月日表示だった賞味期限も、年月表示に変更しています。

スターバックスコーヒージャパン株式会社

コーヒーの他、ケーキやサンドイッチも販売するスターバックスコーヒージャパン株式会社は、2021年8月より廃棄ロス削減プログラムに取り組んでいます。

具体的には、在庫状況に応じて閉店3時間前を目安に20%安く販売する取り組みです。プログラムをフードケース内でアピールすることで、単なる割引ではなく「社会貢献した」という消費者の感じ方への影響も期待できます。

株式会社クラダシ

株式会社クラダシは、ソーシャルグッドマーケット『Kuradashi』を運営しています。Kuradashiでは、パッケージの傷・印字ミスなどが原因で廃棄する商品や賞味期限が近い商品の販売・購入が可能です。

食品ロス削減推進表彰受賞など、外部からも優良な取り組みであると評価されています。

国分グループ株式会社

食品卸売業の国分グループ株式会社は、賞味期限表示を変更することで、廃棄ロス削減に取り組んでいます。

これまで年月日表示していた瓶詰・缶詰の賞味期限を、年月表示に変更しました。日付順の納入から月順の納入に変わったことで、食品ロスを抑えています。さらに、一部商品の賞味期限延長や賞味期限の長い商品の開発にも取り組んでいます。

ブルドックソース株式会社

ブルドックソース株式会社は、食品ロス削減をテーマとしたWebメディア『フリフル』を運営する株式会社Day1と共に、食品ロス削減と生産者支援に取り組んでいます。

発育不足などを理由に規格外となったレタス・白トウモロコシ・ニンジン・カボチャを買い上げ、ブルドックソース株式会社のドレッシングとセットにしたプレゼントキャンペーンを実施することで、食品ロス削減を実現しています。

株式会社マルエツ

首都圏で食品スーパーマーケットチェーンを展開する株式会社マルエツは、2021年2月からフードドライブ活動に取り組んでいます。フードドライブ活動とは、家庭で消費できない食品を回収し、フードバンク団体を通じて支援が必要な施設・家庭に届ける活動です。

他にも、外箱が破損して店頭に並べられない未開封や賞味期限内の商品も提供しています。

廃棄ロス削減で企業にどのようなメリットがある?

企業が廃棄ロス削減に取り組むと、コスト削減と外部からのイメージアップにつながります。

需要予測の精度が上がれば、余分な量を生産する必要がありません。廃棄した商品にかかっていた人件費・材料費などのコストが削減できます。

廃棄ロス削減に注力していることは、自社のWebサイトなどを通じて外部へアピールが可能です。社会課題解決に関心のある人材確保にもつながるでしょう。

廃棄ロス削減にUMWELTが役に立つ


廃棄ロス削減の取り組みを始めるなら、TRYETINGの『UMWELT』をおすすめします。UMWELTは、これまで勘や経験に依存していた需要予測を高い精度で実現できるAIツールです。AIといっても、難しい知識は必要ありません。ここでは、UMWELTの特徴と企業の導入事例を紹介します。

ノーコード予測AIで廃棄ロスを削減

UMWELTは、需要予測や在庫管理といった廃棄ロス削減に効果的な機能を備えています。ノーコードAIで専門知識がなくとも利用できるため、新たな人材を確保する必要がありません。日々のデータを使い、アルゴリズムを組み合わせるだけで廃棄ロス削減に取り組めます。

廃棄ロス削減につながる機能の他、自動発注も可能です。AIによる需要予測結果を用いて自動発注まで実行する仕組みを構築すれば、無駄のない供給ができます。

UMWELTの成功事例

株式会社ASNOVA様は、全国で建設機材のレンタル事業を展開しています。UMWELT導入前は、特定の担当者が過去の入出庫データを参考に需要予測をしており、適正在庫管理や属人化の課題を抱えていました。

UMWELT導入後は、約9か月で適切な在庫量予測を実現しています。失注を防げるだけでなく、機材の稼働率もアップしました。ニーズへの適切な対応は廃棄ロス削減につながるため、UMWELTはコスト削減にも有効なツールです。

(参考: 『【ASNOVA様】UMWELT活用事例|需要予測を自動化して、無駄な在庫を減らして管理コストを削減|TRYETING』

まとめ

世界では10人に1人が飢餓に苦しむ一方で、日本は家庭や企業から出る廃棄ロスの問題を抱えているのが現状です。廃棄ロス削減には、天候データの活用や売り上げの予測精度アップなどさまざまな対策が考えられます。

廃棄ロス削減への取り組みを検討している企業様には、TRYETINGのUMWELTがおすすめです。プログラミングスキルは不要で、データに基づいた在庫管理・需要予測など廃棄ロス削減につながる機能を搭載しています。お気軽にお問い合わせください。

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