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BUSINESS

今年もアメリカでビッグイシューに。AIにリプレースされない仕事とは?

Giant robot throwing man in a trash can. Artifical intelligence replacing jobs concept. Vector illustration.

新年直前の2025年12月、世界的AI研究者のジェフリー・ヒントン氏が、2026年のAIの活躍と展望についての所見を披露した。それによると、2026年を通じてAIは「驚くほどの進化を続け」、最新のソフトウェア・エンジニアリングプロジェクトを始めとする「人間の仕事の多く」をリプレースするとの見通しを示した。

アメリカではすでに大学新卒者向けの仕事などがAIによってリプレースされ始めているが、そのトレンドは今年さらに加速する可能性が高い。一方、AIにリプレースされない、AIと共存できる職種への関心がいよいよ高まっている。AIにリプレースされない仕事は何か、アメリカ最新の話題をお伝えする。

AIのゴッドファーザーの予言

Japanese female entrepreneur brainstorming while working on a computer among her colleagues on a meeting in the office.

ジェフリー・ヒントン(Geoffrey Hinton)氏はイギリス生まれのカナダ人コンピューターサイエンティストで、ニューラルネットワークの研究で名を馳せた「AIのゴッドファーザー」とされる人物だ。2024年に「ニューラルネットワークによる機械学習に関する基礎的発見と発明」によりノーベル物理学賞を受賞している。

ヒントン氏は、今日のAIを構成する基礎技術のひとつであるニューラルネットワークベースの機械学習の産みの親であり、「AIのゴッドファーザー」という異名が誰よりもふさわしい人物である。

そのヒントン氏が年末CNNのインタビューの中で、今年2026年におけるAIの展望について、次の様に発言した。

「(2026年は)AIがさらに進化する年になるでしょう。現時点でもAIは極めて優秀ですが、今年は特に多くの人間の仕事をリプレースしてゆくことでしょう。コールセンターの仕事はすでにリプレースされていますが、より高度なほかの仕事もリプレースしてゆくでしょう」(中略)

「大企業はAIに多額の投資を行い、多くの人間の仕事をリプレースし始めています。企業の利益が増加する一方、人間の失業率は上昇します。一部の人を金持ちにして、大多数の人々を貧困に落とします」

AIのゴッドファーザーの目には、2026年はAIがいよいよ本格的に人間の仕事をリプレースし、多くの人を失業させる厳しい年になると映っているようだ。

LinkedInフォーラムの予想

AIのゴッドファーザーから厳しい見通しを示されてしまった2026年だが、ビジネスの現場で活躍中のアメリカの経営者達はどのように見ているのだろうか。筆者は、人材交流SNSのLinkedInのグループで、主に企業オーナーやCEOなどの企業経営者層が情報や意見を交換するグループに入っている。

そのグループで「次の10年から20年はAIに奪われない仕事」についての意見交換がなされていた。実際の経営者層による、現場で得られた実体験などを踏まえて出された意見がほとんどで、読んでいて大変参考になった。ランキングされたベスト10のうち、ベスト5を中心に紹介するので、ぜひ参考にしていただきたい。

アメリカ最新版・AIにリプレースされない仕事は?

Manager on a chess horse fighting with a queen figure holdind by robot. Artifical intelligence risks concept. Vector illustration.

ランキング1位に挙げられたのは「電気技師、配管工、エアコン設置業者、機械エンジニアなどの「トレードジョブ」(Trade jobs)と呼ばれる仕事だ。今日のアメリカで最も必要とされていて、かつ高給取りであるとされる仕事でもあるが、AIがリプレースできない仕事の筆頭格でもある。「夜中の2時に停電を修理するために凍てつく機械操作室へ潜り込んで作業してくれるAIは存在しない」と、的確なコメントがつけられている。頭脳作業だけでなく人間が手足を動かさねばならない仕事は、当面安泰だと言えるだろう。

2位は「医師、看護師、パラメディカル、介護士などの医療関連の仕事」だ。医療の現場でもAIが日増しにプレゼンスを増しているが、その仕事は「補助的なタスク」がほとんどだ。急変する患者の容態を見ながら瞬時に判断を下し、緊急処置などを施して患者の命を救うといった最前線の仕事は、最終的には人間が手足を動かさねばならない仕事だ。

3位は「セールス関連の仕事」だ。セールスの現場でもAIが存在感を増している。いわゆるコールドコールのテレマーケティングなども最近はAIが自己完結的に行い始めている。しかし、顧客の信頼を獲得し、複雑な社内政治を切り抜け、時にはセールス以外の手なども使ってライバル企業を出し抜くといった「人間臭い仕事」は、まだAIにはリプレースできないようだ。特にマーケティングのような発想力や行動力が求められる仕事については、AIに完全にリプレースされる心配はなさそうだ。

4位は「工事現場監督、プロジェクトマネージャーなどの建設関連の仕事」だ。建設資材管理、工事スタッフ管理、スケジューリングなどの仕事の「アシスト」をAIにさせることは可能だが、工期や予算の厳守といった最終責任を負う仕事は、今なお人間のマネージャーに託されている。工事スタッフが病欠で欠けてしまった緊急時に、マネージャー自らが現場に入って戦力の一翼を担うなどといった芸当は、AIにはまずできないだろう。

5位は「訴訟弁護士などの法律関連の仕事」だ。法律の世界においても、いわゆるリーガルリサーチなどのエントリーレベルジョブがAIに奪われ始めているが、法廷の現場で闘う訴訟弁護士の仕事は、まだAIに奪われていない。訴訟弁護士に求められる信念、説得力、情熱といった資質は人間ならではのものであり、AIがリプレースできるものではない。

以下、6位「セラピスト、カウンセラー・心理療法士」、7位「起業家、ビジネスオーナー
」、8位「消防士、警察官」、9位「フィールド・インフラエンジニア」、10位「労働紛争解決などの人事関連の仕事」とランキングされている。

キーワードは「人の手による仕事」と「エモーショナル・インテリジェンス」

Colleagues standing in a small group discussing something. One of the women is holding documents and gesturing with her hands as the others watch and listen.

以上の仕事の共通点はなんだろうか。それは、いずれも「人の手による仕事」と「エモーショナル・インテリジェンス」が求められていることだ。例えば、医療の現場でAIがいくらプレゼンスを拡げたとしても、ERに運び込まれる瀕死の患者を救う当事者にはなれない。救命医療に必要な投薬や処置などのアドバイスはできるかもしれないが、自ら患者の体に触れて患者を励まし、助けることはできない。患者の命がかかった最前線の現場では、AIはまだ主役にはなれないのだ。

同様に、AIは「エモーショナル・インテリジェンス」を使う仕事はできない。「エモーショナル・インテリジェンス」(Emotional Intelligence)とは、「自分の感情をマネージし、他人の感情を理解する能力」のことだ。特に他人の痛みや悩みなどを理解し、共感する能力だ。エモーショナル・インテリジェンスは、対人で行う多くの仕事で求められる能力だ。医師、看護師、セラピストなどはもちろん、弁護士や工事現場監督、あるいはセールス担当者などにも求められる。人は論理的な面を持つ一方、多くの場面で感情的に動く動物だ。移ろいやすい、儚い人間の感情を理解し、それに寄り添った対応が多くの仕事で求められている。現時点のところ、AIにはこうした仕事はできない。

AIをライバルにするのではなく、パートナーにしよう

Glowing light bulb and business people over blurred background. Hanging light bulb on foreground, team of business people discussing ideas and brainstorming. Bright idea and creativity concept

AIのゴッドファーザーお見立ての通り、今年もAIが多くの人間の仕事を奪ってゆくことになるのは間違いなさそうだ。

一方で、AIがリプレースできない仕事は未だに多く残されており、それらが改めて明確になる年にもなりそうだ。AIがリプレースできない仕事とは、つまり人間が人間たる本質に関わる仕事であり、その具体例として上述の「人の手による仕事」と「エモーショナル・インテリジェンス」を使う仕事が挙げられるだろう。

ポイントは、これからのキャリアビルディングにおいては、AIをライバルにするのではなく、パートナーにすることが求められるということだ。エントリーレベルジョブでいくらAIと張り合ったところで人間に勝ち目はない。そうではなく、AIをアシスタントまたはパートナーとして活用する。AIを上手に活用し、AIによるアシストをベースに「人間ならではの仕事」をしてゆく。今年2026年は、AIとのそうしたコラボレーションを構築し、最大限に活用することが多くの職種において求められる年になるだろう。

参考文献

https://fortune.com/2025/12/28/geoffrey-hinton-godfather-of-ai-2026-prediction-human-worker-replacement/
https://www.linkedin.com/pulse/10-careers-ai-replace-canada-hires-zia6c/
https://mhanational.org/resources/what-is-emotional-intelligence-and-how-does-it-apply-to-the-workplace/

WRITING BY

前田 健二

経営コンサルタント・ライター

事業再生・アメリカ市場進出のコンサルティングを提供する一方、経済・ビジネス関連のライターとして活動している。特にアメリカのビジネス事情に詳しい。

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