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物流を効率化する方法は?DXが必要な背景や国の支援内容もチェック

 

物流業務を効率化したいと考えていても、何から始めたらよいのか悩む方も多いのではないでしょうか。この記事を読むと、物流総合効率化法の概要や活用するメリットが理解でき、自社の効率化の進め方を探る手掛かりになります。DXが必要な背景や、効率化の方法などをご紹介します。

『物流総合効率化法』の概要


物流を効率化するための施策をスタートさせる前に、『物流総合効率化法(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律)』について理解を深めましょう。国がどのような支援を行っているかを知り、自社で活用していくことで効率化にまつわる負担を軽減できます。法律の概要や対象となる事業について確認しましょう。

流通業務の効率化を図る事業を支援

『物流総合効率化法』の目的は、輸送や保管・荷さばき・流通加工という流通にまつわる業務の一体化により、流通業務の効率化の推進と環境負荷の低減を実現することです。継続的に流通業務を推進するために欠かせない労働力の確保も、重要な目的のひとつです。

複数の業者が連携して流通業務にあたる事業計画や、環境負荷の低減・省力化などを図る事業を認定し、支援をします。認定を受けた事業者は、さまざまなメリットを享受できるようになります。

(参考:『物流:物流総合効率化法について – 国土交通省』

支援対象の一例

物流総合効率化法の支援対象となるのは、2者以上の連携により、物流業の総合化・効率化と環境負荷の低減・省力化を図る事業です。例えば、輸送網の集約や輸配送の共同化などで物流効率化を図る事業や、モーダルシフトが該当します。

非効率な輸送網をまとめたり輸配送を共同化し積載率を高めて一括納品をしたりすれば、効率が上がります。「モーダルシフト」は、トラックをはじめとした自動車による輸送業務を環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換する方法です。ただ物流の全行程で、自動車以外の手段を選択しなくても構いません。

・工場からトラックで出荷して転換拠点で船に乗せ替える
・納品先の最寄りの港まで船で運ぶ
・そこからトラックでの輸送を再開する

上記のように、輸送の一部に環境負荷が小さい輸送手段を取り入れる方法も有効です。

認定を受けるまでの流れ

物流総合効率化法の認定を受けるには、最寄りの運輸局などの物流担当窓口で「認定の対象となる計画かどうか」「どのような支援措置を受けたいか」を相談します。その後に本格的な事業計画を作成して申請の上、審査を受ける流れです。

手続きをスムーズに進めるためには、具体的な事業計画を練る前に認定の対象となるものかどうかを確認する必要があります。滞りなく進んだ場合でも、申請から認定までにかかる標準期間は約2か月です。

貴重な時間を無駄にしないためにも、申請の前に事前相談をするとよいでしょう。申請に関する書式や記載例は、国土交通省のWebサイトから確認できます。

物流総合効率化法の認定を受けるメリット


物流総合効率化法は、物流業者が業務プロセスを効率化するのを後押しする内容です。認定を受けた事業者には多くのメリットがあります。どのような恩恵があるかを知ることで、申請するかどうかの判断がしやすくなるでしょう。

税制の優遇から開発許可についての配慮、計画策定や運行にかかる経費の補助など、認定を受けることで物流業者が得られるメリットを4つ紹介します。

税制の優遇を受けられる

物流総合効率化法の認定を受けると、営業倉庫に対する法人税や固定資産税・都市計画税が減免されます。物流業に限らず事業を営む上で、税の負担を軽減できる点は大きなメリットです。

例えば所得税・法人税については、倉庫用建物などに対して5年間にわたり8パーセントの割増償却ができます。償却額が増えて課税所得が減れば、税負担の軽減が可能です。

また固定資産税・都市計画税は、倉庫課税標準を5年間にわたり1/2に軽減といった優遇を受けられます。ただし税制特例の適用には、建物の竣工前に認定を受けなければなりません。

開発許可に関する配慮がなされる

市街化調整区域で物流施設を建設する際は、開発許可が必要です。開発許可制度は、市街地が無秩序に開発されることを防ぐために設けられています。

物流総合効率化法の認定を受けていれば、開発許可に対する配慮がなされ、倉庫をはじめとした施設が建設しやすくなる点もメリットです。ただし、認定を受けていても、開発許可申請の手続き自体は必要である点を知っておきましょう。

計画策定経費や運行経費の補助を受けられる

コストに余裕がない状態だと業務の効率化がなかなか進まないでしょう。物流総合効率化法の認定を受けると、計画策定経費・運行経費などの補助を受けられ業務改善の助けになります。

「計画策定経費補助」は、総合効率化計画を策定するための経費に対する補助です。さまざまな計画策定の補助が可能なので、業務の効率改善を考えているなら認定を受けたほうが負担を減らせます。

「運行経費補助」は、認定された総合効率化計画の運行経費が対象です。認定された計画のうち、モーダルシフトや輸送の集約化などにかかる運行経費の一部を補助します。補助事業には応募受付期間が定められており、決められた期間内に応募しなければならない点に注意しましょう。

資金調達がしやすくなる

物流総合効率化法の認定を受けると、信用保険制度の限度額の拡充や長期低利子貸付制度などの金融支援を受けられ、資金繰りがしやすくなる点もメリットです。

独立行政法人鉄道・運輸機構による、事業実施に必要な資金の貸し付けなども行われています。設備投資や事業計画に必要な資金調達をしやすくなり、事業の継続に役立つというメリットもあります。

物流総合効率化法の要件


物流総合効率化法の認定を受けるための、主な要件を紹介します。どのような支援を必要とするかで、満たさなければならない要件が異なります。詳細は国土交通省のWebサイトや、最寄りの運輸局の物流担当窓口で確認しましょう。

流通業務総合効率化事業の要件

流通業務総合効率化事業の、必須認定要件を確認しましょう。

・実施主体要件:2以上の者(法人格が異なれば、親子関係でも可)による連携
・総合化要件:流通業務(輸送・保管・荷さばき・流通加工)の一体的な実施
・効率化要件:輸送の合理化によって、流通業務を効率化する
・環境負荷低減要件:現行と比較し、CO2排出量削減効果が見込まれる
・省力化要件:現行と比較し、トラックの荷待ち時間の削減効果が見込まれる

いずれかを満たしていればよいのではなく、全てに当てはまる必要があります。

特定流通業務施設の要件

流通業務総合効率化事業の必須認定要件は以下の通りです。

・立地要件:社会資本など(高速自動車国道のICなど、鉄道の貨物駅、港湾、漁港、空港、流通業務団地、工業団地)または卸売市場の周辺5キロメートル以内に立地
・規模要件:床面積3,000平方メートル以上(平屋建)、6,000平方メートル以上(多階建)など
・構造要件:倉庫業法の施設設備基準に適合している。主要構造部の柱やはりが鉄骨造、鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造である
・設備要件:大型車対応荷さばき、転回場(前面に奥行15メートル以上の空地)、流通加工用設備など
・防災要件:非常用データ保存システム(非常時に対応するための「データ保存機能」「通信機能」「電源機能」を備えるもの)など

対象となる倉庫の形態によっても要件が異なります。詳しくは国土交通省のWebサイトや、最寄りの運輸局などの物流担当窓口で確認しましょう。

税制特例措置を利用するための主な要件

税制特例措置を利用するためには、特定流通業務施設の要件に加え、国税や地方税の要件も満たさなければなりません。

対象となる倉庫の形態によって、要件は異なります。例えば普通倉庫・冷蔵倉庫の場合、税制特例を適用するためには、高速自動車国道のICなどの周辺5キロメートル以内、または臨港地区に倉庫が立地している必要があります。

倉庫の構造は、多階建の普通倉庫の場合は耐火建築物、それ以外の場合は耐火建築物または準耐火建築物でなければなりません。施設を倉庫業者へ賃貸する場合、所得税や法人税の特例措置の適用は不可といったルールもあるので注意しましょう。

物流の効率化が急がれる理由


物流の効率化をスムーズに進めるために、国はさまざまな施策を用意して物流業者に変革を促しています。なぜこのような対策が必要なのかを知ると、速やかに業務の効率化を進める必要性が分かるでしょう。物流の効率化が急がれている理由を紹介します。

人手不足やニーズの拡大

物流業の効率化が求められている要因は、人手不足の深刻化や、ECの利用機会が増大するとともに増えるニーズに労働力が追い付かない状態など多様です。

高頻度な小口輸送や再配達の頻発など、荷主や消費者の物流業者に対する要求が加速している背景もあり、これまでのやり方では対応が難しくなる一方と考えられます。

トラックドライバーの数は、少子高齢化や労働環境の悪化などが原因で不足しています。現状に対処するには、業務効率化を行い労働力不足を補ったり働きやすい環境を整えたりする動きが必要です。

国がDXによる効率化を後押しする流れ

国がDXを推進している流れも、効率化が求められている要因のひとつです。国は効率化を進めるために、さまざまな施策を打ち出しています。

例えば『総合物流施策大綱』は、物流業務における既存のオペレーションを改善し、働き方の改革を行うために物流のDXの必要性を提言しています。

またDXを巡る課題を指標項目にした『DX推進指標』は、DXを巡る自社の現状や課題、やるべきことの認識を共有したい場合に役立ちます。業務改善のためには何をすべきなのかを明らかにした上で、アクションにつなげていくことが重要です。

国が物流業務全体の最適化を進めるために動き出している今こそ、業務の見直しや改革を行うチャンスだといえます。

(参考:『総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)概要|国土交通省』
(参考:『「DX推進指標」とそのガイダンス|経済産業省』

物流を効率化するポイント


物流の効率化は計画的に行うことが大事です。行き当たりばったりでは、中途半端な状態になってしまいます。効率化を目指すために何が必要なのかを押さえておくと、失敗を防げます。物流を効率化するポイントを知り、改善に役立てましょう。

物流の効率化に取り組むときに、どのようなポイントを意識すればよいのかを紹介します。

無駄な工程を洗い出す

まずは物流の各プロセスにおいて、無駄な作業がないかを洗い出しましょう。「作業手順」「作業完了までにかかっている時間」「担当者」などの項目に分けて、業務プロセスを客観的に捉えられるようにします。個々の手順を確認することで、無駄を見つけやすくなります。

業務の可視化ができたら不要な工程を排除し、まとめて行ったほうが効率的な作業はないかチェックしてみましょう。併せて人員の配置や倉庫内のレイアウトに無駄がないかも確認し、作業時間の短縮を目指します。

洗い出しを十分に行うことで課題を発見しやすくなり、効果的な改善策を推進できます。

働きやすい環境を整備する

「倉庫内を整理整頓する」「作業員が動きやすいレイアウトにする」などの工夫をして、働きやすい環境を整備しましょう。各工程で必要な動きを最小化すると、作業時間を短縮できます。

例えば効率よくピッキングができるように、倉庫内のレイアウトを見直しましょう。作業時間を短縮できれば、少ない人数でも業務を進められるようになり、無駄な人件費のカットにも役立ちます。

在庫管理・倉庫管理システムを導入する

無駄な工程を探し出す過程で多くの手間や時間がかかっている作業に対して、在庫管理や倉庫管理システムの導入による効率化ができないか、検討してみましょう。物流システムによって業務プロセスの一部をデジタル化すると、大幅に効率が改善するケースがあります。

例えば入出庫管理や在庫管理などの全てを、人の手のみで行うのは大変です。従業員の負担が大きく、ミスが起こる可能性も高まります。物流システムを使えば、人為的なミスを減らせます。さまざまなシステムがあるので、自社に合うものを導入しましょう。

AIによる最適化や自動化を取り入れる

AIツールを導入すると、配送ルートの最適化や荷物量・作業時間の予測などに役立ちます。AIはデータの分析や計算、学習などを得意としているので、蓄積されたデータを有効活用できるようになります。

人力で需要やリードタイムの予測を行うには、大きな労力が必要です。いくつものパターンで予測を立てようとすれば、それだけ多くの時間がかかります。AIツールを使えば複雑な計算を自動で行ってくれるため、人の手でしかできない業務に集中できるようになるでしょう。

UMWELTは物流DXに効果的なAIツール

TRYETINGの『UMWELT』は、物流DXに効果的なノーコードAIツールです。物流業務改善に役立つ、さまざまな数値の分析や予測に活躍します。例えば荷物量の予測や配送ルートの最適化、作業工数の削減に効果的です。

ITやDXに関する知識に自信がない方でも扱えるように、あらかじめ搭載された複数のアルゴリズムを組み合わせてデータの処理や解析などを実行できるように作られています。ドラッグ&ドロップの操作だけで利用できるため、AIの活用に関して知識を持つ人材を確保しなくても運用が可能です。

TRYETINGでは、カスタマーサクセスによるアドバイスやレシピ構築の代行サポートなど、スムーズな運用を助けるサービスも用意しています。疑問や課題が生じた際にも、迅速に解決できるでしょう。

まとめ


物流業務を効率化するために、物流総合効率化法を活用できないか検討してみましょう。要件を満たしていれば、税制の優遇や効率化に必要な費用の支援など小さくない恩恵を受けられます。

業務の効率化のために倉庫を新設したい場合や、環境に配慮したモーダルシフトを考えているのであれば、支援を受けたほうがメリットが大きいでしょう。

効率化を進めるには現状を見直し、あらゆる無駄を排除する動きが必要です。業務プロセスの一部を自動化する方法として、物流システムやUMWELTのようなAIツールの導入を検討してみてください。

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